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1葬儀費用は相続財産ではない
①葬儀費用は相続発生後の債務
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。
どちらも、相続財産です。
葬儀費用は、相続財産ではありません。
被相続人が生前に葬儀費用を負担することはないからです。
葬儀費用は、被相続人から引き継ぐ費用ではありません。
葬儀費用は相続発生後に、負担する債務です。
②香典は相続発生後の贈与
葬式の弔問客の意識としては、香典は被相続人に手向ける気持ちかもしれません。
被相続人は死亡しているので、香典を受け取ることはできません。
香典は、相続財産ではありません。
被相続人が生前に香典を受け取ることはないからです。
香典は、被相続人から引き継ぐ財産ではありません。
香典は、喪主に対する贈与です。
同様に、香典返しも喪主から弔問客への贈与です。
葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。
香典は、相続発生後の贈与です。
③葬儀費用の負担者は明確には決まっていない
葬儀費用は、葬式の契約をした人が支払います。
だれが葬式の契約をするかについて、法律の定めはありません。
だれが葬儀費用を支払うかについて、明確な定めはありません。
裁判所や学者は、次のような意見があります。
(1)相続人全員の負担にする説
(2)喪主が負担する説
(3)相続財産から負担する説
(4)地域の慣習で決める説
被相続人や相続人のそれぞれの事情があるから、一概に決められません。
葬儀費用の負担者は、明確には決まっていません。
④被相続人の口座は凍結される
被相続人の預貯金を払い戻して支払いをすればいいと考えるかもしれません。
金融機関は口座の持ち主の死亡を確認した場合、口座を凍結します。
口座が凍結された場合、原則として、引出しや解約はできなくなります。
被相続人の口座は、凍結されます。
2葬儀費用は遺産分割協議で合意できる
①葬儀費用を負担する人を合意する
葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。
相続財産でない財産であっても、遺産分割協議の話し合いの対象にすることができます。
相続財産ではないから、法定相続分とは別の話です。
相続人全員でよく話し合ってみんなが合意できる結論を出すのが大切です。
葬儀費用の負担で話し合いがまとまらない場合、他の財産の分け方の合意も難しくなりがちです。
相続人全員の合意で、葬儀費用を負担する人を決めることができます。
②立替払いをした人は費用の記録と領収書を保管
実際のところ、特定の相続人が葬儀費用を立て替えているでしょう。
葬儀費用を立て替えた人は、費用の記録と領収書を保管しておきましょう。
僧侶へのお布施や遠方の弔問客等へのお車代など、領収書が出ないときは相手先と金額を記録しておきます。
同様に、受け取った香典についても、記録を付けておくといいでしょう。
疑心暗鬼になると、トラブルになりやすいからです。
葬儀費用を立替払いした人は、費用の記録と領収書を保管することが重要です。
③葬儀費用の範囲を合意する
葬儀費用といった場合、どの範囲の費用が葬儀費用なのかは人によって異なります。
例えば、次のような費用があります。
(1)死亡診断書の発行手数料
(2)葬儀会社へ支払う費用
(3)通夜や葬式の後の飲食代
(4)初七日や四十九日法要の費用
(5)香典返しの費用
(6)僧侶へのお布施
(7)遠方の弔問客等へのお車代
(8)お墓の購入費用
(9)納骨の費用
葬儀費用負担で話し合う場合、どのような費用をだれが負担するか合意するとトラブル防止に役立ちます。
④遺産分割協議は債務不履行で解除できない
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
相続人全員で合意して、相続財産の分け方が確定します。
その後に葬儀費用を支払わなくても、遺産分割協議のやり直しはできません。
一部の相続人が遺産分割協議を法定解除をすることはできません。
法定解除とは、契約などで義務を負担する約束をしたのに履行されない場合に相手方が契約を一方的に解除することです。
遺産分割協議で約束したことを履行しない場合、他の相続人は遺産分割協議を解除をすることはできません。
遺産分割協議のやり直しは、相続人全員の合意が必要です。
相続人全員の合意がある場合、遺産分割協議の合意解除ができます。
遺産分割協議は、債務不履行で解除ができません。
3葬儀費用を遺産分割協議書に書く方法
①特定の相続人が負担する記載例
記載例
第○条
相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が負担することを合意する。
遺産分割協議書には、葬儀費用の具体的な金額を記載することをおすすめします。
葬儀費用の金額について相続人の合意がある場合、トラブル防止に役立つからです。
葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。
遺産分割協議で、葬儀費用などの負担について合意をすることができます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた書面が遺産分割協議書です。
相続財産の分け方以外の項目について相続人全員で合意した場合、遺産分割協議書に盛り込むことができます。
相続財産の分け方以外の項目について記載してある場合であっても、遺産分割協議が無効になることはありません。
②複数の相続人が分担する記載例
記載例
第○条
相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が金200万円、相続人□□□□が金100万円負担することを合意する。
相続人□□□□は相続人○○○○に対して、令和○年○月○日までに、葬儀費用負担金100万円を振り込みの方法により支払う。
振込手数料は、相続人□□□□の負担とする。
喪主は、葬式を主宰します。
多くの弔問客の対応など、気苦労が多い役目でしょう。
葬式で大変な思いをしたうえに葬儀費用をすべて負担するとなると、不満に思うかもしれません。
複数の相続人で分担するように合意することができます。
③預金等で調整する記載例
記載例
第○条
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
第○条
相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が負担することを合意する。
遺産分割協議とは、相続財産の分け方についての相続人全員による話し合いです。
相続人全員が合意できるのであれば、どのような分け方をすることもできます。
相続発生後に被相続人名義の口座は、凍結されます。
葬儀費用は、一部の相続人が立替ているでしょう。
葬儀費用を立て替えている相続人に、預貯金を多く相続してもらう合意をすることができます。
実質的に、相続財産から支出することができます。
4遺産分割協議がまとまらないときは家庭裁判所
①遺産分割調停で合意
相続人で合意ができない場合、家庭裁判所の助力を得て合意を目指します。
遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員を交えた相続人の話し合いです。
調停委員の助言があるとはいえ相続人同士の話し合いだから、相続財産以外のことについて話し合いができます。
遺産分割調停では、相続財産以外の葬儀費用についても話し合いことができます。
相続人だけで話し合いをした場合、感情的になって収拾がつかなくなるかもしれません。
家庭裁判所の調停委員を交えると、ある程度冷静になることができます。
第三者を交えることで、相続人全員が折り合いをつけることができるかもしれません。
②遺産分割審判は葬儀費用が対象外
遺産分割調停で合意ができない場合、遺産分割審判に移ります。
遺産分割審判は、相続人の話し合いではありません。
裁判官が遺産分割の内容を決定します。
遺産分割審判は、相続財産の分け方についての決定です。
遺産分割の内容を決定するだけだから、葬儀費用については決定されません。
葬儀費用は、相続財産ではないからです。
③民事訴訟
遺産分割審判では、相続財産の分け方が決定されます。
葬儀費用負担については決定されないから、遺産分割審判では解決しません。
葬儀費用負担について合意できない場合、あらためて民事訴訟をすることになります。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
内容よりもとにかく文書さえあればいいという意識の低い人がいるのも事実です。
遺言書がなければ、遺産分割協議書は必要になると言って差し支えありません。
悪いようにしないからとにかく印鑑を押せとか、相続税の申告期限をちらつかせて押印を迫るとか、他に財産はないからと言われてトラブルになることも多いです。
有効な話し合いによる合意があって、有効な合意を文書に取りまとめるから、トラブルを防ぐことができるのです。
相続財産を分け方について相続人全員で合意することは原則としてやり直しができません。
司法書士は合意を確認して、書類を作成しています。
申告期限のためにとにかく書類だけ作るなど絶対にやめましょう。
適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。