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1相続登記を家族が代理申請
①相続登記は相続人本人が自分で申請できる
被相続人が不動産を所有していた場合、不動産は相続人が相続します。
相続登記は、不動産の名義変更のことです。
不動産を相続する相続人が自分で相続登記をすることができます。
相続登記は、相続手続の中でも複雑で手間のかかる手続です。
不動産は、多くの人にとって重要な財産です。
法務局は、重要な財産の名義変更を慎重に審査するからです。
(1)法律の素養がある
(2)調べものが好き
(3)平日の日中に役所に何度も足を運ぶ充分な時間と根気熱意がある
上記にあてはまる人は、相続登記に向いているかもしれません。
相続登記は、相続人本人が自分で申請することができます。
②無報酬で1回限りなら家族が代理申請できる
相続登記は、相続手続の中でも複雑で手間のかかる手続です。
自分で登記申請をするのが難しい場合は、代わりの人に申請してもらうことができます。
無報酬でかつ、業務として代理するのでないのなら、家族に依頼して申請してもらうことができます。
業務として代理するとは、反復継続する意思が認められることです。
今回が1回目でも今後も同じことをする意思がある場合、業務として代理していると判断されます。
今後も同じことをする意思がある場合、違法になります。
無報酬で1回限りなら、家族が代理で申請することができます。
③報酬を受けて業務として代理できるのは司法書士と弁護士だけ
報酬を受けて業務として代理できるのは、国家資格者だけです。
登記申請を報酬を受けて業務として代理できるのは、司法書士と弁護士だけです。
2代理申請に委任状が必要
①委任状は依頼されたことの証明書
相続登記は、家族に依頼して代理で申請してもらうことができます。
相続人本人以外の人が登記申請をする場合、家族であっても委任状が必要です。
委任状は、相続人本人から依頼されたことの証明書です。
相続登記を申請する場合、たくさんの添付書類と一緒に委任状を法務局に提出します。
相続人本人以外の人が申請する場合、書面で依頼を受けたことを証明する必要があるからです。
申請する権限が認められない場合、相続登記をすることができません。
司法書士や弁護士に依頼する場合であっても家族であっても、委任状は必要です。
委任状は、相続人本人から依頼されたことの証明書です。
②不適切な委任状は認められない
適切な依頼を受けていない場合、相続登記を取り下げることになるでしょう。
適切な依頼を受けていない場合、相続登記を代理する権限が認められないからです。
不動産は、多くの人にとって重要な財産です。
登記申請書だけでなく、委任状についても法務局は慎重に審査します。
委任状は、依頼されたことの証明書だからです。
委任状の記載が不適切であった場合、適切な依頼を受けたとは言えなくなります。
だいたい合っているから大丈夫ではなく、完璧な記載が求められます。
一般の人から見ると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
相続登記に委任状には、登記申請書の内容と同じ内容を記載します。
登記申請書を訂正することができても、代理人は委任状の記載を訂正できないことが多いものです。
委任状の内容は、本人が依頼した内容だからです。
適切な委任を受けていないと判断されることになります。
適切な委任を受けていない場合、相続登記の申請を取り下げることになります。
不適切な委任状は、相続登記が認められなくなります。
③委任状の押印は認印で良い
委任状は、代理人に依頼した内容を証明する書類です。
依頼した人は、委任状に押印しなければなりません。
押印は、実印である必要はありません。
依頼した人の認印で差し支えありません。
委任状に書き間違いを見つけた場合、名前の横に押した印と同一印を押印して、訂正します。
④委任状に契印・割印
委任状に書くべき内容は、たくさんあります。
複数ページに渡る委任状になることがあります。
1通の委任状であることが分かるように、割印・契印を施します。
クリップでとめるだけなど差し替えができる状態では、委任内容を証明できるとは言えないからです。
適切な委任があったと認められない場合、相続登記を取り下げなければならなくなります。
委任状が複数枚になる場合、割印・契印を施します。
3家族が代理申請をするときの委任状の書き方
司法書士などの専門家に依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。
登記申請を依頼するのであれば、司法書士が作成した委任状に記名押印するだけで済みます。
相続登記に必要な委任状には、次のことを記載します。
①相続登記を依頼される人の名前と住所
②相続登記を依頼する旨
「次の登記申請に関する一切の権限を委任します。」と記載すると分かりやすいでしょう。
③登記の目的
④登記原因
⑤相続人
③~⑤は、相続登記の申請書と同じです。
あらかじめ申請書を作ってあるのであれば、そのまま丸写しすれば記載できます。
申請書の記載を書き直す場合、委任状の記載を一緒に書き直す必要があります。
内容が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されるおそれがあります。
適切な委任を受けていない場合、登記申請を受け付けてもらえないかもしれません。
⑤相続人は、まず括弧をつけて被相続人の氏名をフルネームで記載します。
相続人が複数で共有する場合、相続人の住所氏名だけでなく持分も記載します。
⑥不動産の表示
相続登記の対象になる不動産の表示を記載します。
目的になる不動産の登記簿謄本を確認して、そのまま書き写せば記載できます。
記載事項は、申請書の内容と同じです。
土地であれば、次の事項を記載するといいでしょう。
(1)所在
(2)地番
(3)地目
(4)地積
建物であれば次の事項を記載するといいでしょう。
(1)所在
(2)家屋番号
(3)種類
(4)構造
(5)床面積
建物でも敷地権のあるマンションの一室であれば次の事項を記載するといいでしょう。
(1)一棟の建物の表示
i所在
ii建物の名称
(2)専有部分の建物の表示
i家屋番号
ii建物の名称
iii種類
iv構造
v床面積
(3)敷地権の目的である土地の表示
i土地の符号
ii所在及び地番
iii地目
iv地積
(4)敷地権の表示
i土地の符号
ii敷地権の種類
iii敷地権の割合
相続の対象が土地と建物など不動産が複数ある場合、順番に書き連ねれば差し支えありません。
不動産がたくさんある場合、書くべき項目の書き忘れに注意しましょう。
書くべき項目の書き忘れがあった場合、不動産が特定できないと指摘されるおそれがあります。
不動産を特定できない委任状の場合、登記申請を受け付けてもらえません。
⑦依頼する項目の補足事項
相続登記を申請する場合、登記申請だけでなく付随する手続があります。
手続の一環として一緒にお願いしておくと、手続がスムーズになります。
付随項目を書き忘れてしまうと、代理人が手続できなくなります。
具体的には、次のような項目です。
1.登記識別情報の受領の件及びその受領について復代理人選任に関する一切の件
1.登記識別情報の受領に関する一切の件
1.原本還付請求及び受領に関する一切の件
1.復代理人選任に関する一切の件
1.登記に係る登録免許税の還付金を受領する件
特に「登記識別情報の受領に関する一切の件」は重要です。
登記識別情報とは、権利証のことです。
代わりに登記申請をお願いしたのに、権利証を受け取りするために法務局に出向かなければならなくなるからです。
⑧日付
⑨登記申請をお願いする人の住所氏名
ふだん住所は簡単な記載をしている場合であっても、住民票の記載どおり書きましょう。
⓾押印
名前の横に押印します。
4委任状が不要になる例外
①相続人が未成年で親権者が申請
相続人本人が赤ちゃんであることがあります。
赤ちゃんなどの未成年者は、物事の良しあしを適切に判断することができません。
相続人が赤ちゃんである場合、親などの親権者が代わりに相続登記をすることができます。
未成年者は充分な判断ができないから、親などの親権者があらゆることを代理することが認められています。
未成年者に代わって親などの親権者が相続登記をする場合、委任状は不要です。
委任状の代わりに、親などの親権者であることを証明する書類が必要です。
親などの親権者と言えども、他人だからです。
親などの親権者であることを証明する書類とは、親子関係を証明する戸籍謄本です。
相続登記をする場合、親子関係を証明する戸籍謄本は発行後3か月以内のものでなければなりません。
②相続人が認知症で成年後見人が申請
相続人が認知症であることがあります。
認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。
記憶があいまいになることがあるでしょう。
認知症の人は自分で判断することができないから、成年後見人が代わりに判断します。
成年後見人は、認知症の人をサポートする人です。
認知症の人に代わって成年後見人が相続登記をする場合、委任状は不要です。
委任状の代わりに、成年後見人であることを証明する書類が必要です。
成年後見人と言えども、他人だからです。
成年後見制度を利用している場合、登記がされます。
成年後見人であることは、後見登記事項証明書で証明することができます。
相続登記をする場合、成年後見人であることを証明する後見登記事項証明書は発行後3か月以内のものでなければなりません。
③遺言執行者が相続登記
被相続人が遺言書を作成していることがあります。
遺言書がある場合、遺言書の内容どおりに財産を分けることができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、相続人のため相続登記を申請することができます。
遺言執行者が相続登記を申請する場合、委任状は不要です。
委任状の代わりに、遺言執行者であることを証明する書類が必要です。
遺言執行者が遺言書で指名された場合、遺言書で証明することができます。
遺言執行者が家庭裁判所で選任された場合、選任審判書と確定証明書で証明することができます。
④法定相続で権利証が発行されない
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続人になる人の相続分も、法律で決まっています。
法律で決まっている相続分を法定相続分と言います。
相続人は、法定相続分で相続することができます。
法定相続分で相続すると、相続人全員で共有することになります。
不動産の共有はデメリットが多いので、おすすめできません。
相続人全員の合意があれば、法定相続分以外の分け方をすることができます。
多くの場合、相続人全員の合意で分け方を決めます。
相続人全員が法定相続分で共有する相続をする場合、原則として、相続人全員が相続手続に参加します。
相続登記をする場合、相続人全員が申請するのが原則です。
例外として、一部の相続人から委任状なしで相続登記を申請することができます。
一部の相続人から相続登記を申請する場合であっても、相続人全員が登記名義人になります。
相続人全員が登記名義人になるのに、登記申請人になった相続人にだけ権利証が発行されます。
登記申請人になっていない相続人に対して、権利証は発行されません。
後から権利証を発行してもらうこともできません。
一部の相続人が相続人全員のために相続登記をすることができるけど、おすすめできません。
権利証がないと、不動産を売却するときや担保に差し出すときに困るからです。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。
ほとんどの方は、相続を何度も経験するものではありません。
手続に不慣れで、聞き慣れない法律用語でへとへとになります。
一般的にいって、相続登記は、その中でも難しい手間のかかる手続です。
不動産は、重要な財産であることが多いものです。
一般の方からすると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
本人が自分で申請している場合、些細なことであれば法務局の窓口まで出向いて申請書の記載を補正することができるケースがあります。
申請書の記載誤りがあると、委任状も記載誤りになります。
代理人に依頼して申請している場合、委任状の記載も一緒に補正する必要があります。
委任状の記載内容は、本人が依頼したことのはずです。
代理人が補正することを認めてもらえない場合が多いものです。
申請書と委任状の記載が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されます。
適切な委任を受けていない場合、申請書は受け付けてもらえません。
いったん申請を取り下げて、やり直しになります。
相続登記は簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があることもあります。
法務局の登記相談に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いです。
司法書士はこのような方をサポートしております。
相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。
相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。