相続放棄の戸籍謄本はコピーでいい

1相続放棄に必要な戸籍謄本

①共通で必要になる戸籍謄本

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

相続放棄をする場合、戸籍謄本を提出します。

相続放棄をする人によって、必要になる戸籍謄本は異なります。

だれが相続放棄をするときでも、共通で必要になる戸籍謄本は次のとおりです。

・被相続人の死亡を証明する戸籍謄本

・相続人の現在戸籍

人が死亡した場合、市区町村役場に死亡届を提出します。

死亡届提出直後に戸籍謄本を取得した場合、死亡の記載がされていません。

市区町村役場で死亡届が処理されているからです。

死亡届が処理されて、死亡の記載がある戸籍謄本を取得する必要があります。

相続放棄ができるのは、相続人だけです。

相続人になるはずの人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になりません。

相続人の戸籍謄本は、被相続人の死亡日以降に発行されたものが必要です。

②配偶者が相続放棄するときの戸籍謄本

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人になります。

配偶者であることは、被相続人の戸籍謄本で判明します。

配偶者が相続放棄をする場合、追加で必要になる戸籍謄本はありません。

③子どもが相続放棄するときの戸籍謄本

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子どもであることは、子ども本人の戸籍謄本で判明します。

子どもが相続放棄をする場合、追加で必要になる戸籍謄本はありません。

相続人になるはずだった子どもが先に死亡することがあります。

子どもの子どもが代襲相続します。

子どもの代襲相続人が相続放棄をする場合、子どもの死亡を証明する戸籍謄本が必要です。

④親などの直系尊属が相続放棄するときの戸籍謄本

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

被相続人に子どもがいないことは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本で判明します。

被相続人に子どもがいても、子どもが先に死亡することがあります。

子どもの代襲相続人も先に死亡することがあるでしょう。

子どもの代襲相続に、制限はありません。

何代先の子孫であっても、代襲相続人になります。

相続人になるはずだった子どもに子どもがいないことは、子どもの出生から死亡までの連続した戸籍謄本で判明します。

子どもがいないことを確認するためには、たくさんの戸籍謄本が必要になります。

世代が異なる直系尊属が複数いることがあります。

世代が異なる直系尊属が複数いる場合、世代が近い人が相続人になります。

例えば、父母と祖父母がいる場合、父母が相続人になります。

父母であることは、被相続人の戸籍謄本で判明します。

祖父母が相続人になるのは、父母が先に死亡しているときです。

祖父母が相続放棄をする場合、父母の死亡を証明する戸籍謄本が必要です。

⑤兄弟姉妹が相続放棄するときの戸籍謄本

被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

被相続人に子どもがいないことは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本で判明します。

親などの直系尊属が被相続人より先に死亡していることは、父母や祖父母の戸籍謄本で判明します。

相続人になるはずだった兄弟姉妹が先に死亡することがあります。

兄弟姉妹の子どもが代襲相続します。

兄弟姉妹の代襲相続人が相続放棄をする場合、兄弟姉妹の死亡を証明する戸籍謄本が必要です。

兄弟姉妹の代襲相続は、一代限りです。

兄弟姉妹の子どもである甥姪が先に死亡した場合、甥姪の子どもは代襲相続しません。

甥姪が相続放棄をする場合、たくさんの戸籍謄本が必要になります。

2相続放棄の戸籍謄本はコピーでいい

①東京・名古屋・大阪家庭裁判所などはコピーでいい

相続放棄をする場合、たくさんの戸籍謄本が必要になります。

市区町村役場で発行された戸籍謄本をそのまま提出するのが原則です。

東京・名古屋・大阪家庭裁判所などでは、戸籍謄本のコピーで差し支えない運用をしています。

自分は相続放棄をするけれど、他の相続人は単純承認することがあります。

単純承認をした他の相続人は、相続手続をします。

相続手続では、戸籍謄本が必要になります。

相続放棄で提出する戸籍謄本が必要になります。

相続放棄で提出する戸籍謄本がコピーでいいと、再取得する手間を省くことができます。

相続放棄の戸籍謄本をコピーでいいとする取扱いは、東京・名古屋・大阪家庭裁判所など一部の家庭裁判所のみです。

②戸籍謄本のコピーを付けて原本還付

相続放棄の手続では、市区町村役場で発行された戸籍謄本をそのまま提出するのが原則です。

戸籍謄本のコピーで受け付ける運用をしているのは、東京・名古屋・大阪家庭裁判所など一部の家庭裁判所のみです。

単純承認をした他の相続人のため、戸籍謄本を返してもらいたいことがあるでしょう。

相続放棄の申立てをする際に、戸籍謄本等の原本還付申請をすることができます。

戸籍謄本等の原本還付申請をしても、認められることも認められないこともあります。

籍謄本等の原本還付申請をする場合、戸籍謄本と一緒に戸籍謄本のコピーを提出します。

戸籍謄本の返却用に返信用の封筒と郵便切手を添付します。

レターパックプラスなど記録がされる郵便が安心です。

戸籍謄本のコピーを付けて、原本還付をしてもらうことができます。

③法定相続情報一覧図は再交付してもらえる

相続手続をする場合、たくさんの戸籍謄本が必要になります。

相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍の束を提出しなければなりません。

法定相続情報一覧図は、被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめた書面です。

この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらいます。

法定相続情報一覧図は、認証文と登記官の押印がある公的な証明書です。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出において、必要枚数を発行してもらうことができます。

相続放棄をする際に、戸籍謄本の代わりに法定相続情報一覧図を提出することができます。

法定相続情報一覧図は、複数発行してもらえます。

保管及び申出のときに発行してもらっても、不足することがあるでしょう。

法定相続情報一覧図は、再交付をしてもらうことができます。

法定相続情報一覧図には、厳格な書き方ルールがあります。

相続放棄をする際に、必要な事項が網羅できないことがあります。

不足する分は、原則どおり戸籍謄本を提出します。

法定相続情報一覧図は、再交付してもらうことができます。

④法定相続人情報は相続放棄で使えない

法定相続人情報とは、相続関係を一覧化した図です。

長期相続登記等未了土地解消作業により、判明した調査結果です。

法定相続情報一覧図とちがい、認証文と登記官の押印がありません。

相続登記をする場合、法定相続人情報の作成番号を申請書に記載します。

法定相続人情報の作成番号を記載した場合、戸籍謄本を提出した取り扱いがされます。

法定相続人情報は、相続登記以外で使うことはできません。

法務局の報告書に過ぎないからです。

法定相続人情報で、相続放棄をすることはできません。

3戸籍謄本以外の必要書類

①被相続人の除票または戸籍の附票

相続放棄の申立ては、管轄があります。

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

被相続人の除票は、家庭裁判所の管轄を確認するために提出します。

除票の代わりに、戸籍の附票を提出することができます。

除票は、住民票を置いていた市区町村役場に請求します。

戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場に請求します。

相続手続では、戸籍謄本を準備します。

戸籍謄本に本籍が記載されているから、戸籍の附票を取得する方が便利でしょう。

②相続放棄申述書

相続放棄申述書は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

家庭裁判所へ出向いて、用紙を受け取ることもできます。

③収入印紙800円分

相続放棄には、手数料がかかります。

手数料は、相続放棄をする人1人あたり800円です。

相続放棄の手数料は、収入印紙で納入します。

収入印紙は、次のところで購入することができます。

・郵便局郵便窓口、ゆうゆう窓口

・コンビニエンスストア

・法務局印紙売りさばき窓口

名古屋家庭裁判所では、収入印紙を購入することはできません。

相続放棄申述書の右上に、収入印紙貼付欄があります。

収入印紙は相続放棄申述書に貼り付けるだけで、消印はしません。

相続放棄申述書を受け付けた後、裁判所の職員が消印をするからです。

④郵便切手

家庭裁判所が手続で使う郵便切手を予納します。

家庭裁判所ごとに、必要な切手の種類と枚数が指定されています。

家庭裁判所によっては、ホームページで必要な郵便切手を公表しています。

⑤相続放棄で印鑑証明は不要

相続放棄申述書には、押印が必要です。

相続放棄申述書の押印は、認印で差し支えありません。

実印を押さないから、印鑑証明書も不要です。

相続放棄の手続ため、実印と印鑑証明書を用意するように言われることがあります。

相続放棄のためと称していますが、相続放棄の手続のはずがありません。

相続放棄の手続は、相続放棄をする相続人が自分でするものだからです。

他の相続人が相続放棄の手続をするものではありません。

相続放棄の手続には、実印も印鑑証明書も不要です。

実印と印鑑証明書を用意するように言われた場合、遺産分割協議をしようとしているのでしょう。

遺産分割協議と相続放棄は、まったく別の手続です。

相続放棄で印鑑証明は、不要です。

4相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙に、ハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。

通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。

家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

通常の相続放棄と同様に、戸籍謄本や住民票が必要になります。

仕事や家事、通院などで忙しい人には、平日の昼間に市区町村役場に出向いて準備するのは負担が大きいものです。

戸籍謄本や住民票は、郵便による取り寄せができます。

書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。

事務負担は、軽いとは言えません。

戸籍謄本や住民票の取り寄せは、司法書士におまかせすることができます。

3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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