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1遺言書は元気なときに作成する
①重度の認知症になると遺言書は作成できない
15歳以上の人は、遺言書を作成することができます。
遺言書を作成するには、遺言能力が必要だからです。
遺言能力とは、遺言書の内容を理解しメリットデメリットを充分に判断する能力です。
遺言書は、判断能力がしっかりしているうちだけ作成することができます。
認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することが難しくなります。
初期の認知症で、簡単な内容の遺言書であれば作成できるかもしれません。
重度の認知症になると、物事のメリットデメリットを判断することができなくなるでしょう。
物事のメリットデメリットを判断することができない状態で、遺言書を作成することはできません。
遺言書のつもりで書いても、無効です。
②高齢で遺言書を作成すると相続人間のトラブルを招く可能性
高齢化社会になって、多くの人は長寿になりました。
高齢になると、認知症を発症することがあるでしょう。
80歳後半になると、2人に1人は認知症になっているというデータもあります。
遺言書は、高齢になってから作成するイメージがあるかもしれません。
高齢になってから遺言書を作成するのは、おすすめできません。
重度の認知症になると、遺言書を作成することができなくなるからです。
遺言書を作成する場合、財産の分け方について書くでしょう。
一部の相続人にとって、期待どおりの分け方ではないことがあります。
期待した財産を受け取れないと、がっかりします。
遺言者が認知症になっていて、判断能力がなかったからと考えるでしょう。
期待した財産を受け取れない相続人は、遺言書の無効を訴えるでしょう。
遺言書の無効を争うとき、相続人間で大きなトラブルになります。
遺言書は、元気なときに作成します。
だれから見ても認知症の疑いがないくらい、元気なときに作成するのがおすすめです。
高齢で遺言書を作成すると、相続人間のトラブルを招く可能性があります。
2相続人・受遺者が先に死亡したときの遺言書
①遺言者が死亡したときに遺言書は効力発生
遺言書は、元気なときに作成するのがおすすめです。
遺言者が死亡するまで、遺言書には効力がありません。
遺言者が死亡したときに、遺言書に効力が発生します。
遺言書を作成してから遺言者が死亡するまで、長期間経過することが多いでしょう。
長期間経過しても、遺言書が無効になることはありません。
遺言書に、有効期限はありません。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。
②先に死亡した相続人は相続できない
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人になる人は、相続が発生したときに生きている人のみです。
先に死亡した人は、相続人になることはできません。
「相続人〇〇〇〇に財産〇〇を相続させる」
上記のような遺言書を作成しても、遺言者が生きている間は効力がありません。
上記のような遺言書を作成しても、遺言者が生きている間は何の権利もありません。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。
相続が発生したら財産を引き継ぐことができると予想しているでしょう。
遺言者が生きている間は、期待権すらありません。
遺言者が死亡するまで、遺言書に効力が発生しないからです。
先に死亡した人は、相続人になることはできません。
先に死亡した相続人は、財産を引き継ぐことはできません。
相続人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
遺言書に効力が発生したときに、相続人は生きている必要があるからです。
先に死亡した相続人は、相続できません。
③先に死亡した受遺者は遺贈を受けることができない
被相続人は、生前に自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書を作成して、自分の死後にだれに引き継ぐのか自由に決めることができます。
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
遺贈によって財産を引き継ぐ人を受遺者と言います。
相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。
遺贈を受けることができるのは、、相続が発生したときに生きている人のみです。
先に死亡した人は、受遺者になることはできません。
「〇〇〇〇に財産〇〇を遺贈する」
上記のような遺言書を作成しても、遺言者が生きている間は効力がありません。
上記のような遺言書を作成しても、遺言者が生きている間は何の権利もありません。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。
先に死亡した人は、受遺者になることはできません。
先に死亡した受遺者は、財産を引き継ぐことはできません。
受遺者が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
遺言書に効力が発生したときに、受遺者は生きている必要があるからです。
先に死亡した受遺者は、遺贈を受けることができません。
④遺言書の内容は代襲相続できない
相続人になる人は、法律で決められています。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
相続が発生した時点で、子どもが先に死亡していることがあります。
相続人になるはずだった子どもが先に死亡した場合、子どもの子どもが相続人になります。
子どもの子どもが相続人になることを代襲相続と言います。
相続人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
受遺者が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
相続人・受遺者が先に死亡した場合、代襲相続をすることはできません。
遺言書によって財産を受け取る権利は、本人限りだからです。
遺言書の内容は、代襲相続ができません。
⑤受け取る人がいない財産は相続財産
相続人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
受遺者が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
相続人・受遺者が先に死亡した場合、代襲相続をすることはできません。
相続人・受遺者が受け取るはずだった財産は、受け取る人がいなくなります。
遺言書で受け取る人の指定がない財産は、相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人になるはずだった人が先に死亡した場合、死亡した相続人の子どもは代襲相続ができます。
死亡した相続人の子どもは代襲相続人として、遺産分割協議に参加します。
死亡した相続人の子どもが代襲相続人であっても、優先権はありません。
遺言は無効になっているからです。
相続人全員の合意が得られれば、その財産を相続することができます。
⑥遺言書自体は有効
遺言者より相続人・受遺者が先に死亡したとき、遺言は無効になります。
無効になるのは、遺言者より先に死亡した相続人・受遺者にかかる部分のみです。
遺言全体が無効になるのではありません。
遺言書自体は、有効です。
遺言者より先に死亡した相続人・受遺者にかかる部分以外は、有効です。
3相続人・受遺者が先に死亡したときの対処方法
①遺言書は何度でも書き直しができる
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言書を作成してから、遺言者が死亡するまでに長期間あるのが通常です。
長期間経過するうちに、財産状況が変わることがあるでしょう。
長期間経過するうちに、相続人や受遺者が先に死亡することがあるでしょう。
遺言者自身が考えを変えることがあります。
遺言書を作成した後に、書き直しをすることができます。
書き直しをするにあたって、相続人や受遺者の同意は不要です。
遺言によって財産を取得することが予想できるとしても、遺言者の生前は期待権すらないからです。
遺言書の書き直しをしないと約束していても、無効の約束です。
遺言書の書き直しをしないと約束していても、遺言書の書き直しをすることができます。
遺言書は、何度でも書き直しができます。
②死亡したときに備えて予備的遺言
相続人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
受遺者が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
遺言書を作成する場合、財産を引き継ぐ人は遺言者より長生きすることを想定しているでしょう。
遺言者より若い世代の人であっても、先に死亡する可能性は否定できません。
相続人・受遺者が先に死亡した場合、相続人・受遺者の子どもなどに引き継ぐ希望があることがあります。
財産を引き継ぐ人が先に死亡したときに備えて、二次的に承継先を決めておくことができます。
二次的に承継先を決めておくことで、遺言者が別段の意思表示をしたと言えます。
遺言者が別段の意思表示をした場合、遺言者の意思に従います。
予備的遺言は、遺言者の別段の意思表示です。
予備的遺言について、さらに予備的遺言をすることもできます。
予備的遺言をすると、遺言が複雑になりがちです。
司法書士などの専門家のサポートを受けて遺言書を作成するのがおすすめです。
③家族信託を利用する
家族信託とは、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持つ仕組みです。
本人と信頼できる家族で、家族信託契約を締結します。
家族信託契約において、さまざまなことを決めておくことができます。
例えば、信託する期間や信託が終了したときに残った財産を引き継ぐ人を決めておくことができます。
家族信託で残った財産を引き継ぐ人を帰属権利者と言います。
信託終了時に財産を引き継ぐ人が先に死亡していることがあるでしょう。
先に死亡したときに備えて、予備的帰属権利者を決めておくことができます。
家族信託を上手に利用すると、家族のトラブルを減らすことができます。
4受遺者が後に死亡したときは遺贈は有効
①受遺者が死亡しても名義変更ができる
遺言者が死亡した後に相次いで受遺者が死亡することがあります。
遺贈された財産の名義変更をする前に受遺者が死亡しても、遺贈は有効です。
受遺者が死亡しても、財産の名義変更をすることができます。
例えば、遺贈された財産が不動産である場合、死亡した受遺者名義に変更することができます。
受遺者が生前に不動産の所有者であったことを公示する必要があるからです。
遺言執行者と受遺者の相続人が協力して、所有権移転登記をします。
②受遺者の相続人は遺贈の放棄ができる
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
遺言書は、遺言者がひとりで作ります。
遺言書は、相続人などの関与なしで作ることができます。
遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。
遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。
相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したい場合もあるでしょう。
遺贈は、放棄することができます。
受遺者が相次いで死亡した場合、遺贈の放棄をする権利は相続人に相続されます。
受遺者の相続人は、遺贈を放棄することができます。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言書の書き方ルールは民法という法律で、細かく決められています。
自分が死んだ後のことは考えたくないという気持ちから、先延ばししがちです。
いろいろ言い訳を考えてしまうかもしれません。
不動産は、分けにくい財産の代表例です。
目立った財産がないから、家族がもめ事を起こすことはないという言い訳はよく聞きます。
相続財産は自宅不動産だけの場合、目立った財産がない場合と言えるでしょう。
分けにくい不動産だけの場合、家族がトラブルになりやすいケースです。
家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。
死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠です。
まず、遺言書を書くことをおすすめします。
トラブルにならない場合でも、遺言書があると相続手続は格段にラクになります。
状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。
家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。
遺言書の書き直しのご相談もお受けしています。
家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。
家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。