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1死後事務委任契約で死亡後のサポートを依頼する
①死後事務委任契約で死亡後の手続を依頼する
死後事務委任契約とは、死亡後に必要になる手続を依頼する契約です。
通常の委任契約は、死亡によって終了します。
死後事務委任契約は、当事者が死亡しても終了しません。
死後事務委任契約で死亡後の事務を依頼しておくと、家族に迷惑をかけなくて済みます。
死後事務委任契約を利用することで、安心して自分らしく人生を送ることができます。
②死後事務委任契約で得られるメリット
メリット(1)疎遠な親族に迷惑をかけない
自分が死亡した後に、さまざまな手続が必要になります。
親族に迷惑をかけたくないと、考えているかもしれません。
疎遠な親族しかいない場合、なおさら迷惑をかけたくないでしょう。
自分が元気な間に、死亡後のさまざまな手続を依頼しておくことができます。
メリット1つ目は、疎遠な親族に迷惑をかけない点です。
メリット(2)自分で決めて自分らしい人生を送ることができる
自分の生き方は、自分で決めたいでしょう。
生きている間だけでなく、葬儀や納骨の希望があるかもしれません。
葬儀や納骨の希望も含めて自分らしい人生と言えます。
メリット2つ目は、自分で決めて自分らしい人生を送ることができる点です。
メリット(3)死亡後の手続を任せられる安心感
相続を何度も経験することは、あまりありません。
残された人は何をしたらいいのか、困ることが多いでしょう。
やってもらいたいことを依頼しておくことで、残された人を安心させることができます。
やってもらいたいことを依頼しておくことで、自分が安心することができます。
メリット3つ目は、死亡後の手続を任せられる安心感です。
2死後事務委任契約で安心を得る方法
①死後事務委任契約で依頼できること
(1)親族や知人への連絡
自分が死亡した事実を関係者に連絡してもらうことができます。
(2)葬儀や埋葬の手配
依頼者が死亡した後、すぐに発生する手続です。
次の事項を依頼することができます。
・遺体の引取り
・葬儀や火葬の手続
・埋葬やお墓の手続
・供養に関する手続
どのような葬儀にしてもらいたいのか、宗教や形式を具体的に決めておきます。
火葬後の納骨や散骨の方法を具体的に決めておきます。
人生最後の儀式を安心して、任せることができます。
(3)治療費や施設代の精算
死亡までの治療費や介護施設の費用を精算してもらうことができます。
(4)賃貸借契約の解除
依頼者が賃貸マンションなどに住んでいることがあります。
賃貸マンションの賃貸借契約を解除し鍵を返却してもらうことができます。
部屋の清掃や家財道具の処分し原状回復をして、明渡し依頼することができます。
(5)ペットの引き継ぎ
飼主にとって大切な家族であるペットは、飼主を失うと人間以上に困ります。
ペットの引取り先を指定して引渡しを依頼することができます。
(6)健康保険や年金手続などの行政手続
死亡したら、健康保険証や介護保険証を返還します。
健康保険証や介護保険証の返還を依頼することができます。
年金受給者が死亡した場合、受給権者死亡届を年金事務所に提出します。
受給権者死亡届の提出を依頼することができます。
(7)デジタルデータの解約や処分
SNSアカウントを放置すると、乗っ取り行為や荒らし行為に使われるおそれがあります。
SNSアカウントの削除を依頼することができます。
インターネットや携帯電話契約の解約手続が必要になります。
契約解約だけでなく、パソコンやスマートフォンの個人情報を抹消してもらうことができます。
②信頼できる相手方を選ぶことが重要
(1) 相手方に特別な資格は不要
死後事務委任契約をする相手方は、特別な資格は不要です。
家族以外の第三者でも、死後事務委任契約の相手方になることができます。
本人が信頼できる人であることが重要です。
(2)友人や知人
死後事務委任契約の相手方は、知人や友人であっても差し支えありません。
信頼できる友人や知人に、依頼することができます。
(3)司法書士や弁護士
司法書士や弁護士などの専門家に、死後事務を依頼することができます。
専門家にサポートを依頼する場合、契約書を作成する段階から携わることになるでしょう。
認知症対策や相続対策を含めて、トータルでサポートしてもらうことができます。
(4) 社会福祉協議会
社会福祉協議会の事業で、死後事務の委任を受けていることがあります。
社会福祉協議会が事業を行っていても、利用できる人に制限が設けられています。
例えば、名古屋市社会福祉協議会では名古屋市あんしんエンディングサポート事業を行っています。
名古屋市あんしんエンディングサポート事業を利用できる対象者は、次の制限があります。
・名古屋市内に居住する65歳以上の一人暮らし
・市民税が非課税
・預託金を一括で預託できること
上記以外にも、さまざまな制限があります。
(5)民間企業
民間企業が死後事務委任契約の受任者になることができます。
信用できる企業であるのか、慎重に判断する必要があります。
③死後事務委任契約締結の流れ
手順(1)依頼内容を決める
自分が何に不安に思っているのか、書き出してみるといいでしょう。
依頼者が何を依頼したいのか、決定します。
手順1つ目は、依頼内容を決めることです。
手順(2)相手方を決める
死後事務を依頼する相手方を決定します。
本人が信頼できる人に依頼することが重要です。
手順2つ目は、相手方を決めることです。
手順(3)契約書を作成する
委任契約は、口頭の合意であっても成立します。
口頭の合意より、契約書の作成がおすすめです。
契約書がないと、合意があったのか証拠がないからです。
死後事務の手続先に対して、合意があったことを証明できないでしょう。
死後事務の手続先に信用してもらうため、契約書を作成します。
死後事務委任契約は、依頼者が死亡した後の事務を依頼します。
依頼者が死亡した後に、依頼したか確認することはできません。
手順3つ目は、契約書を作成することです。
手順(4)公正証書にする
死後事務委任契約は、公正証書にするのがおすすめです。
公正証書とは、公証人が作成する公文書です。
公証人が当事者の本人確認をしたうえで本人の意思確認をして、公正証書にします。
公正証書にすると、依頼者の意思が明確になります。
手順4つ目は、公正証書にすることです。
④契約内容の変更方法
死後事務委任契約を締結した後で内容を変更したい場合、契約当事者で話し合いをします。
新たな合意内容を契約書に取りまとめます。
公正証書で契約をしている場合、変更契約も公正証書にするのがおすすめです。
⑤死後事務委任契約の解約方法
委任契約は、いつでも解約できるのが原則です。
理由を問わずに、解約することができます。
解約の意思表示は、口頭でもできますがおすすめできません。
証拠がないと、「言った言わない」のトラブルになるからです。
死後事務をするために準備をしていた場合、損害賠償を求められることがあります。
本人が死亡した後に相続人が解約することがないように、相続人による解約を禁止する条項を設けることが一般的です。
依頼者の意思を守るためです。
⑥死後事務委任契約がおすすめの人
死後事務委任契約がおすすめの人は、主に次の人です。
(1)おひとりさま
(2)ひとり暮らしで身寄りがない
(3)子どもなど家族に迷惑をかけたくない
(4)親族が遠方に住んでいる
(5)親族と疎遠
(6)自分のことを自分で決めておきたい
(7)事実婚・同性婚のパートナーに任せたい
3死後事務委任契約で安心を得るポイント
安心ポイント①依頼する事務を明確にする
死後事務委任契約で依頼できることは、多岐にわたります。
どんな事務をやってもらいたいのか、明確にします。
どのようにやってもらいたいのか、詳細に決めておきます。
どんな事務をどのようにやってもらうのか決めたら、合意内容は契約書に記載します。
希望する内容をもれなく契約書に盛り込むと、安心です。
相続人が依頼内容に異議を述べても、契約書を示すことができるからです。
安心ポイント1つ目は、依頼する事務を明確にすることです。
安心ポイント②信頼できる相手方を選ぶ
死後事務委任契約をする相手方は、特別な資格は不要です。
だれでも死後事務委任契約の相手方になれるから、信頼できる人であることが重要です。
費用面だけを重視して決めると、適切に死後事務を行ってくれないことがあるからです。
安心ポイント2つ目は、信頼できる相手方を選ぶことです。
安心ポイント③契約書は公正証書にする
公正証書は、高い信頼性があります。
公証人は、本人確認をしたうえで本人の意思確認をして公正証書にするからです。
公正証書で死後事務委任契約をした場合、事務の手続先は合意内容を信頼してくれるでしょう。
相続人と受任者の間で、依頼内容をめぐって「言った言わない」のトラブルになることがあります。
公正証書で契約しておくと、裁判などで証拠として提出することができます。
トラブルを防止するため、死後事務委任契約書は公正証書にすると安心です。
公正証書には、高い信用があるからです。
安心ポイント3つ目は、契約書は公正証書にすることです。
安心ポイント④費用や支払方法を明確にする
依頼する事務の内容によって、必要になる費用は異なります。
死後事務委任契約の相手方に、報酬を支払う必要があるでしょう。
必要になる費用や報酬を明確にしておくと、安心です。
支払方法や金額は契約書に盛り込むと、トラブル防止になるからです。
安心ポイント4つ目は、費用や支払方法を明確にすることです。
安心ポイント⑤死後事務委任契約を周知する
死後事務委任契約では、葬儀や納骨の方法を指定して依頼することができます。
家族や周囲の人が異なる希望を持っていることがあります。
自分の希望は、家族や周囲の人に伝えておくことが重要です。
せっかく依頼したのに、家族とトラブルになるおそれがあるからです。
自分の希望を伝え死後事務委任契約を締結したことを周知しておくと、安心です。
相続人が死後事務委任契約をしたことを知らないと、受任者との間でトラブルになるからです。
安心ポイント5つ目は、死後事務委任契約を周知することです。
4死後事務委任契約と併用でもっと安心
①相続手続は遺言書作成
死後事務委任契約は、死亡した後の事務を依頼する契約です。
財産の分け方など相続手続に、関与することはできません。
財産の分け方は、遺言書で決めておくことができます。
遺言書で財産の分け方が指定されている場合、遺言書どおりに分けることができます。
遺言書を作成して、遺言執行者を指名することができます。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者がいると、遺言者にとって安心です。
確実に遺言書の内容を実現してくれるからです。
遺言執行者がいると、相続人にとって安心です。
手間と時間がかかる相続手続をおまかせできるからです。
死後事務委任契約の他に遺言書を作成すると、もっと安心です。
②任意後見契約で認知症になったときの備え
認知症になると、物事のメリットデメリットを適切に判断することができなくなります。
安心して日常生活を送るため、サポートが必要になるでしょう。
死後事務委任契約は、生前のサポートを依頼することはできません。
任意後見契約とは、認知症などになったときに備えてサポートを依頼する契約です。
信頼できる人に、財産管理などのサポートを依頼することができます。
死後事務委任契約の他に任意後見契約をすると、もっと安心です。
③財産管理委任契約で身体が衰えたときの備え
任意後見契約は、認知症になった後で効力が発生します。
判断能力がしっかりあるけど、身体が不自由になることがあるでしょう。
任意後見契約でも死後事務委任契約でも、サポートを依頼することはできません。
財産管理委任契約は、認知症になるまでサポートを依頼する契約です。
信頼できる人に、財産管理などのサポートを依頼することができます。
死後事務委任契約の他に財産管理委任契約をすると、もっと安心です。
5生前対策を司法書士に依頼するメリット
生前対策=相続「税」対策の誤解から、生前対策はする方はあまり多くありません。
争族対策として有効な遺言書ですら、死亡者全体からみると10%未満です。
対策しないまま認知症になると、家族に大きな面倒をかけることになります。
認知症になってからでは遅いのです。
お元気なうちに準備する必要があります。
なにより自分が困らないために、大切な家族に面倒をかけないために生前対策をしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。