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1投資信託は相続財産
①投資信託は当然に分割されない
投資信託は、口数でカウントされます。
例えば、被相続人が○○ファンドを10万口保有していることがあります。
相続が発生した場合、被相続人の投資信託は相続の対象になります。
相続人が複数いる場合、被相続人の投資信託は相続人全員の共有財産です。
仮に相続人2人が平等に相続する場合、5万口ずつ当然に分割されることはありません。
○○ファンド10万口を相続人2人が共有しているだけです。
自動で1人5万口相続するわけではありません。
投資信託は、当然に分割されることはありません。
②投資信託が当然に分割されない理由
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
投資信託は口数でカウントされるから、当然に法定相続分で分割されると誤解しがちです。
投資信託を購入する人は、投資信託から利益を得たいと考えているでしょう。
投資信託の金銭支払請求権だけに注目してしまうかもしれません。
投資信託が適切に利益をあげるために、投資する人は投資信託を監督する機能があります。
例えば、投資信託の財産に関する帳簿書類を見せてもらう権利があります。
信託財産に関する帳簿書類を見せてもらう権利は、分割できる権利ではありません。
投資信託には、金銭支払請求権以外の権利が含まれています。
分割できない権利が含まれているから、投資信託は当然に分割することはできません。
③投資信託の分け方は相続人全員の合意で決める
被相続人が投資信託を保有していることがあります。
投資信託保有中に相続が発生した場合、投資信託は相続人全員の共有財産です。
投資信託が口数でカウントされていても、当然に分割されることはありません。
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決めなければなりません。
相続人全員の合意ができるまで、投資信託は相続人全員で共有になります。
投資信託は債権と案が得られることから、正確には準共有と言います。
投資信託の分け方について相続人全員の合意がまとまったら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容の証明書です。
相続人全員で合意内容を確認して、記名し実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印によるものであることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
2投資信託があるときの遺産分割協議書
①投資信託やMRFの記載例
記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
取扱金融機関 ○○証券○○支店
商品名 ○○ファンド
口数 ○○○○口
商品名 ○○マネーリザーブファンド
口数 ○○○○口
②遺産分割協議中も価格変動がある
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産に投資信託が含まれていた場合、投資信託は相続人の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続人全員の合意ができるまで、ある程度時間がかかるでしょう。
相続人全員の合意ができるまで、長期間かかることがあります。
投資信託は、日々値動きがあります。
投資信託の分け方を決める話し合いをしている間、値上がりし値下がりします。
投資信託の分け方を相続人全員で合意した後、値上がりし値下がりします。
相続財産の分け方について話し合いをする場合、他の相続人が受け取る財産の内容が気になるでしょう。
自分が投資信託を取得する合意をした後、値下がりしても合意を無効にすることはできません。
他の相続人が投資信託を取得する合意をした後、値上がりしても値上がり益の分配を求めることはできません。
投資信託は値動きがあることを承知したうえで、分け方について合意をする必要があります。
③遺産分割協議中も分配金が支払われる
投資信託の保有者には、定期的に元本償還金や収益分配金が支払われます。
投資信託の保有者が死亡しても、支払われます。
投資信託の分け方を決める話し合いをしている間も、支払いがされます。
元本償還金や収益分配金が支払われる投資信託である場合、支払スケジュールを確認しておきましょう。
支払われた元本償還金や収益分配金を含めて、相続財産の分け方を合意することでより公平な遺産分割をすることができます。
④解約違約金の特約がある可能性
投資信託には、購入から一定期間に売却する場合に解約違約金が発生する特約が付いていることがあります。
投資信託を相続した後、売却したいと考えていることがあるでしょう。
相続した後すぐに売却すると、結果として受け取る金額が少なくなるおそれがあります。
相続した後しばらく保有していた方が解約違約金の点から有利かもしれません。
投資信託は、日々値動きがあります。
解約違約金がかからなくなるまで保有し続けたことで、投資信託自体の値段が下がるおそれがあります。
解約違約金と値下がりリスクを充分に判断する必要があります。
⑤売却益に税金
投資信託を相続した後、売却したいと考えていることがあるでしょう。
投資信託を相続した場合、被相続人が投資信託を取得したときの取得価額は引き継がれます。
被相続人が投資信託を取得したときの価額から値上がりをしていることがあります。
値上がりしただけで投資信託を売却していない場合、売却益は得ていません。
値上がりした投資信託を売却した場合、売却益を得ることができます。
売却益は、課税対象です。
売却益は、譲渡所得にあたります。
売却益を得た場合、税金がかかります。
3投資信託があるときの相続手続
①死亡の連絡で口座凍結
口座の持ち主が死亡したことを証券会社に連絡します。
証券会社は口座の持ち主が死亡したことを知った時点で口座を凍結します。
口座の凍結とは、口座の取引をできなくすることです。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
相続人全員の合意がまとまらないうちに、一部の相続人が口座を解約してしまうことがあります。
相続人全員の合意が必要なのに、口座を解約したら相続人間で大きなトラブルになります。
証券会社は相続人間のトラブルに巻き込まれることになるでしょう。
他の相続人から強い抗議を受けることになります。
被相続人の財産を守れなかったとなると、証券会社の信用は失墜します。
証券会社は、信用失墜は何としても避けたいでしょう。
相続人間のトラブルに巻き込まれないため、被相続人が死亡した連絡を受けたら口座を凍結します。
②証券会社に書類を提出
口座の持ち主が死亡した場合、口座は凍結されます。
口座が凍結されると、口座の取引をすることができなくなります。
証券会社所定の相続手続をすれば、凍結解除してくれます。
証券会社によって違いはありますが、おおむね次の書類が必要です。
(1)遺言書がある場合
・遺言書
・遺言書の検認済証明書(法務局保管でない自筆証書遺言のみ)
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
・遺言執行者の印鑑証明書
・遺言執行者がいない場合、相続人の印鑑証明書
(2)遺産分割協議をする場合
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・相続人全員の現在戸籍
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
(3)遺産分割調停・審判をする場合
・遺産分割協議調停調書または審判書
・相続人の印鑑証明書
相続によって追加で書類が必要になることがあります。
③相続人が口座を開設
被相続人の投資信託を相続するためには、相続人名義の口座が必要になります。
相続人が口座開設をします。
④被相続人の口座から移管
証券会社に相続手続をした場合、提出した書類の審査がされます。
問題がなければ、被相続人の投資信託は相続人の口座に移管されます。
相続人の口座に移管された後は、相続人が自由に処分することができます。
相続人の口座に移管された後は、被相続人の口座が自動で閉鎖されます。
4投資信託の相続を司法書士に依頼するメリット
金融商品にあまり関心のない相続人は、投資信託がよく分からないでしょう。
一般の預貯金であれば値動きがありません。
話し合いが長引いても、あまり大きな影響はありません。
投資信託は、株式や債券で運用します。
日々、大きな値動きがあります。
解約違約金がかかったり、税金がかかったりします。
投資信託は、預貯金などよりトラブルになりやすいものです。
証券会社などの手続も、分かりにくいことが多いものです。
このような手続は司法書士などの専門家に、丸ごとお任せできます。
トラブルなく円満な相続手続をしたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。