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1戸籍が高齢者消除されても相続手続はできない
①高齢者消除で戸籍を整理する
相続人調査をすると、戸籍謄本に高齢者消除の許可と記載されていることがあります。
生年月日を確認すると、100歳以上の高齢者であることがほとんどです。
高齢者消除とは、戸籍の整理のための行政措置です。
100歳以上の高齢者が戸籍に記載されているものの死亡の可能性が高い場合に、戸籍から抹消する制度です。
法務局長の許可を得て、市長村長が職権で抹消します。
多くの場合、家族が何も知らないところで、高齢者消除がされます。
②高齢者消除があったときの戸籍の記載例
高齢者消除があったとき、戸籍には次のように記載されます。
【高齢者消除の許可日】令和〇年〇月〇日
【除籍日】令和〇年〇月〇日
③高齢者消除で相続手続ができない理由
高齢者消除で戸籍が整理されても、法律上、死亡扱いはされません。
高齢者消除は、単に戸籍の整理に過ぎないからです。
戸籍を整理して、行政手続の効率化を図ります。
行政上は死亡扱いするけど、法律上は生きている扱いです。
高齢者消除の戸籍謄本があっても、次の手続はできません。
・相続登記
・預貯金の名義変更
・生命保険の死亡保険金の請求
戸籍を高齢者消除で除籍しても、相続手続ができないのは当然です。
高齢者消除をしても、生きている扱いだからです。
高齢者消除の戸籍謄本を提示しても、死亡の証明にはなりません。
2戸籍が高齢者消除されても失踪宣告が必要になる
①失踪宣告で死亡と見なされる
戸籍が高齢者消除されている場合、死亡の可能性が非常に高いと言えます。
失踪宣告とは、行方不明の人を死亡した扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
長期間生死不明のままであると、家族が困ります。
生死不明の人の財産は、家族であっても勝手に処分することができません。
失踪宣告は、家族が売却などの処分をするための制度と言えます。
②失踪宣告をしないと何もできない
失踪宣告をしないと、生死不明の人は生きている扱いのままです。
生きている人の財産だから、家族は何もできないままです。
たとえ家族であっても、持ち主以外の人は勝手に処分ができないからです。
③普通失踪と特別失踪(危難失踪)
失踪宣告には、2種類あります。
普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。
一般的に、失踪宣告と言うときは普通失踪を指しています。
特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。
④失踪宣告で相続が開始する
失踪宣告がされると、行方不明者は死亡と見なされます。
高齢者消除で行政上死亡扱いされたうえ、失踪宣告で法律上も死亡扱いになります。
死亡と見なされる日に、相続が発生します。
死亡と見なされる日は、次のとおりです。
・普通失踪 7年経過した日
・特別失踪(危難失踪) 危難が去った日
相続が発生するから、相続手続をすることができます。
失踪宣告が記載された戸籍謄本を提示して、相続手続を進めます。
失踪宣告は、死亡扱いする制度だからです。
⑤失踪宣告の条件
失踪宣告には、重大な効力があります。
失踪宣告の条件は、次のとおりです。
(1)行方不明の人が生死不明であること
(2)生死不明の期間が一定以上継続していること
失踪宣告の種類によって、生死不明の期間が異なります。
普通失踪は、7年です。
特別失踪(危難失踪)は、1年です。
生死不明のまま上記の期間を経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
⑥申立先
行方不明の人の住所地や居住地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。
⑦失踪宣告の申立人は利害関係人のみ
生死不明のまま長期間経過しても、自動で失踪宣告はされません。
申立人が失踪宣告の申立てをする必要があります。
失踪宣告の申立てができるのは、利害関係人に限られています。
法文上は利害関係人というものの、法律上の利害関係人がある人に限られています。
例えば、次の人は法律上の利害関係人と考えられます。
・行方不明の人の配偶者
・行方不明の人の相続人
・行方不明の人と遺産分割協議をする他の相続人
単なる友人で心配している人とか相続人以外の家族は、法律上の利害関係が認められません。
失踪宣告には重大な効力があるから、申立人を限定しています。
⑧高齢者消除された戸籍謄本を提出できる
失踪宣告の申立書に添付する書類は、次のとおりです。
・行方不明の人の戸籍謄本
・行方不明の人の住民票または戸籍の附票
・失踪を証する資料
高齢者消除された戸籍謄本を提出することができます。
高齢者消除で戸籍が除籍されている場合、住民票は職権消除されているでしょう。
職権消除された住民票を失踪を証する資料として提出することができます。
警察に行方不明者届を提出している場合、行方不明者届受理証明書を提出することができます。
・申立人の利害関係を証する資料
⑨費用
(1)手数料
失踪宣告の申立てにかかる手数料は、800円です。
申立書に収入印紙を貼り付けて、納入します。
(2)連絡用郵便切手
失踪宣告の手続で、家庭裁判所が使う郵便切手を予納します。
予納する郵便切手の額面や枚数は、家庭裁判所ごとに異なります。
(3)官報公告料
家庭裁判所の指示があってから、官報公告料4816円を納入します。
失踪宣告の手続では、2回官報公告があります。
⑩失踪宣告にかかる期間
失踪委宣告の申立てから失踪宣告がされるまで、1年程度かかります。
⑪失踪宣告の申立ての流れ
手順(1)失踪宣告の申立て書の提出
手順(2)家庭裁判所による調査
手順(3)官報による公示催告
手順(4)家庭裁判所による失踪宣告の審判
手順(5)失踪宣告の確定
手順(6)市区町村役場に失踪届を提出
手順(7)戸籍に失踪宣告が記載される
⑫失踪宣告がされたときの戸籍の記載例
戸籍には、次のように記載されます。
【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日
【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日
【届出日】令和〇年〇月〇日
【届出人】親族 〇〇〇〇
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
死亡の取り扱いがされるから、相続が発生します。
3失踪宣告は他の手段で代替できない
①死亡届が使えない現実
人が死亡したら、医師が死亡を確認し死亡診断書を作成します。
死亡診断書を添付して、市区町村役場に死亡届を提出します。
死亡を確認できないと、死亡届を提出することはできません。
戸籍が高齢者消除された場合、理論上は死亡届を提出する余地がないわけではありません。
現実的には、死亡を確認することは極めて困難でしょう。
死亡届を提出できるのは、極めて稀なケースに限定されます。
実際の死亡を確認できないと、生きている扱いが続きます。
失踪宣告を受けないと、死亡の扱いをすることはできません。
②不在者財産管理人選任後に失踪宣告
(1)不在者財産管理人選任の申立て
財産を残したまま、持ち主が行方不明になることがあります。
長期間行方不明になっても、家族など持ち主以外の人は勝手に処分ができません。
不在者財産管理人とは、行方不明の人の財産を管理する人です。
家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が選任します。
(2)不在者財産管理人選任後も生きている扱い
不在者財産管理人が選任されても、相続は発生しません。
行方不明者は、生きている扱いです。
戸籍が高齢者消除された場合、現実的には生きている可能性は低いでしょう。
不在者財産管理人は、行方不明者の生死が明らかになるまで管理を続けます。
不在者財産管理人が管理を続ける間、報酬がかかり続けます。
(3)不在者財産管理人は家族の希望をかなえる人ではない
戸籍が高齢者消除された場合、長期間行方不明であると言えます。
長期間行方不明である場合、失踪宣告の条件を満たしているかもしれません。
失踪宣告がされると、死亡と見なされる重大な効果があります。
帰りを待つ家族の中には、心理的抵抗を覚えるかもしれません。
不在者財産管理人選任は生きている扱いだから、帰りを待つ家族の心情に適う可能性があります。
不在者財産管理人がいても、行方不明者の財産について家族は処分できないままです。
不在者財産管理人は行方不明者の財産を管理する人であって、家族の希望をかなえる人ではないからです。
(4)失踪宣告で死亡扱いができる
失踪宣告は、行方不明者を死亡と見なす制度です。
失踪宣告がされると死亡扱いがされるから、相続が発生します。
不在者財産管理人が選任されても、相続は発生しません。
不在者財産管理人が選任されても、結局のところ失踪宣告が必要になるでしょう。
失踪宣告がされないと、相続が発生しないからです。
4失踪宣告は取消しができる
①生きていたら失踪宣告取消の申立て
長期間行方不明であっても、新天地で元気に生きていることがあります。
失踪宣告は、生きて帰ってくることを前提とした制度です。
失踪宣告を受けた人が帰ってきたら、失踪宣告取消の申立てをします。
②失踪宣告取消で受取った財産は返還する
失踪宣告を受けたら、相続が発生します。
失踪宣告が取消されたら、相続で受取った財産は返還します。
相続で財産を受け取った後、相続人が財産を処分することがあるでしょう。
第三者に渡った財産は、取り返すことができません。
相続人も第三者も行方不明者が生きていたことを知らなかったのに、返還するのは酷だからです。
失踪宣告の取消を受けた人は、相続人に対して現に利益を受けている限度で返還請求をすることができます。
5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。
行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。
相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。
失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。
通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。
知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。
税金の専門家なども対応できないでしょう。
困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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