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1農地の名義変更に農地法の許可が必要
①農地の権利移動で農地法3条の許可が必要
農地は、食糧生産のために重要な役割を担っています。
勝手に手放したり勝手に農業をやめてしまうと、国の食糧生産に大きな影響があります。
農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。
許可が必要になる権利移動は、売買、贈与、賃貸などです。
農地法第3条の許可の要件は、次のとおりです。
(1) 全部効率利用要件
全部効率利用要件とは、農地の全部をつかって効率よく農業をすることです。
農地を耕作するのに充分な労働力が確保されているか技術があるか審査されます。
労働力が不足する場合、充分な能力がある機械があるか審査されます。
(2)農作業常時従事要件
農作業常時従事要件とは、農作業に常時従事することです。
常時とは、年間150日以上とされています。
住居と生計を同一する家族が満たせば認められます。
権利者本人だけでなく家族で助け合えば、要件を満たすことができます。
(3)下限面積要件
下限面積要件とは、農地を取得する人の耕作する面積の要件です。
下限面積は、5000平方メートルです。
すでに耕作している土地がある場合、合算して審査されます。
地域によっては、下限面積要件を緩和しています。
新規の就農者を増やしたいことがあるからです。
(4)地域調和要件
地域調和要件とは、地域の取組に協力的であることです。
地域の活動に支障がある場合、許可されにくくなります。
例えば、地域全体で無農薬栽培に取り組んでいる場合、協力しない人には許可されにくいでしょう。
②農地の転用で農地法4条の許可が必要
農地の転用とは、農地を農地以外の土地にすることです。
例えば、農地を宅地にして家を建てる場合、農地の転用に該当します。
農地の転用には、農地法第4条の許可が必要です。
③農地の転用と権利移動で農地法5条の許可が必要
農地の転用と権利移動をする場合があります。
例えば、農地を売却したうえで宅地にして家を建てる場合です。
農地の転用と権利移動をするには、農地法第5条の許可が必要です。
④許可がないと権利取得ができない
農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。
農地法の許可は、権利移動の効力発生要件です。
農地法の許可書が到達したときに、権利が移転します。
農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。
2孫に農地を相続させることができる
①孫は相続人ではない
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②子どもが先に死亡すると孫は代襲相続人
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。
相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡することがあります。
相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続します。
子どもが先に死亡すると、孫は代襲相続人になります。
③孫と養子縁組をすると相続人になる
養子縁組とは、血縁関係がある親子とは別に法律上の親子関係を作る制度です。
被相続人は、孫と養子縁組をすることができます。
被相続人が養親で、孫が養子になります。
養子は、養親の子どもです。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
養子は、相続人になります。
被相続人の実子と養子は、同じ子どもです。
被相続人に実子がいても、養子は相続人です。
養子は、養親の子どもだからです。
孫と養子縁組をした場合、孫は相続人になります。
④相続で農地を取得するときは3条の許可不要
相続人になる人は、法律で決まっています。
法律で決められた人だけが相続人になります。
相続できるのは、相続人だけです。
相続人が農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。
孫が相続人になる場合、孫が農地を取得するときに農地法第3条の許可は不要です。
農地法第3条の許可を得ずに農地を取得する場合、農地法第3条の3の定めにより届出が必要です。
農地法第3条の3の定めによる届出は、農業委員会に対して提出します。
提出期限は、相続があったことをしてから10か月以内です。
相続で農地を取得するときは、農地法第3条の許可は不要です。
3孫に農地を特定遺贈をすることができる
①相続人以外の人に特定遺贈ができる
孫が相続人でない場合、孫は相続することはできません。
孫に農地を受け継いでもらいたい場合、別の方法を考える必要があります。
被相続人は遺言書を作成して、自分の財産を遺贈することができます。
遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。
特定遺贈とは、財産を特定して譲ってあげることです。
遺言書に「財産○○を遺贈する」と具体的に書いてある場合です。
特定遺贈では、遺言書に書かれた財産を受け継ぐだけです。
他の財産を受け取ることはありません。
相続人以外の人に、特定遺贈ができます。
特定遺贈は、相続人にも相続人以外の人にもすることができるからです。
孫が相続人でなくても、特定遺贈をすることができます。
②相続人でない孫に特定遺贈するときは3条の許可が必要
遺贈は、遺言書で財産を受け継ぐことです。
遺贈は、相続ではありません。
相続人以外の人が特定遺贈で財産を受け継ぐことができます。
相続人以外の人が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。
相続人以外の人に特定遺贈をしたい場合、許可されるのか農業委員会に確認しておくといいでしょう。
農業委員会の許可が得られない場合、遺言の内容は実現できなくなります。
子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。
孫に相続させることはできません。
孫に遺贈することができます。
孫が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。
孫は、相続人以外の人だからです。
③相続人である孫に特定遺贈するときは3条の許可が不要
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続します。
子どもが先に死亡すると、孫は代襲相続人になります。
被相続人が孫と養子縁組をした場合、孫は被相続人の子どもです。
孫が被相続人の養子になった場合、孫は相続人になります。
遺言書を作成して、相続人に対して特定遺贈をすることができます。
相続人である孫に農地を特定遺贈をした場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
4孫に農地を全部包括遺贈することができる
①相続人以外の人に全部包括遺贈ができる
遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。
包括遺贈とは、財産を特定せずに譲ってあげることです。
全部包括遺贈は「財産すべてを包括遺贈する」と記載してある場合です。
全部包括遺贈をする場合、法定相続人や法定相続人以外の人に全財産を譲ってあげることができます。
孫が相続人でなくても、全部包括遺贈をすることができます。
②全部包括遺贈を受けると遺産分割協議の余地はない
全部包括遺贈を受けた場合、相続財産は相続人と共有することがありません。
相続が発生したときに、遺言書が効力を発します。
遺言書が効力を発したときに、全部包括受遺者が財産すべてを受け継ぎます。
全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。
相続人や全部包括受遺者が遺産分割協議を望んでも、遺産分割協議の余地がありません。
③孫に全部包括遺贈するときは3条の許可が不要
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
5孫に一部包括遺贈することができる
①相続人以外の人に一部包括遺贈ができる
遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。
包括遺贈とは、割合だけ指定して譲ってあげることです。
一部包括遺贈は「財産の3分の1を包括遺贈する」と記載してある場合です。
包括遺贈では、何を遺贈するのか具体的財産は記載されていません。
②一部包括遺贈を受けたら遺産分割協議
一部包括遺贈は、指定した割合で財産を譲るものです。
一部包括遺贈を受けた場合、遺産分割協議に参加します。
包括受遺者が遺産分割協議に参加するのは、権利であるし義務でもあります。
遺言書は割合だけ書いてあるだけで、具体的な財産は記載されていないからです。
相続財産は、包括遺贈を受けた人と相続人全員で共有しています。
相続財産の分け方について、包括遺贈を受けた人と相続人全員で合意する必要があります。
包括受遺者がいるのに、相続人全員だけで遺産分割協議をしても無効です。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられているからです。
遺産分割協議の結果次第では、農地を受け取ることができないかもしれません。
一部包括遺贈を受けただけでは、何を受け取るのか決められていないからです。
一部包括遺贈を受けたら、遺産分割協議が必要です。
③孫に一部包括遺贈するときは3条の許可が不要
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
④包括遺贈は負債も受け継ぐ
特定遺贈では、遺言書に書いてある特定の財産を受け継ぐだけです。
遺言書に書いていない他の財産を受け継ぐことはありません。
特定遺贈では、負債を受け継ぐことはありません。
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
相続財産に負債がある場合、指定された割合で負債を引き継ぎます。
農業を営んでいる場合、多額の負債があることがあります。
包括遺贈を受ける場合、農地だけでなく多額の負債を引き継ぐことになります。
6孫に農地を贈与することができる
①孫に農地を生前贈与で3条の許可が必要
生前贈与をする場合、贈与する人と贈与を受ける人の合意が必要です。
農地を贈与の対象にすることができます。
贈与を受ける人は、親子でも親子以外の人でも差し支えありません。
農地を生前贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。
農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。
孫に農地を生前贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。
②孫に農地を死因贈与で3条の許可が必要
贈与は、贈与する人と贈与を受ける人の契約です。
死因贈与は、贈与する人が死亡したときに効力が発生する贈与契約です。
農地を死因贈与の対象にすることができます。
農地を死因贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。
農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。
孫に農地を死因贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。
7遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。
死期が迫ってから、書くものではありません。
遺言書は被相続人の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。
遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。
受け継いでもらう財産に不動産がある場合、譲ってもらう人だけでは登記申請ができません。
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。
遺言書で遺言執行者を決めておきましょう。
遺言執行には、法的な知識が必要になります。
遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。
遺言の効力が発生した後の場合、遺言執行者は家庭裁判所に決めてもらう必要があります。
不動産以外の財産であっても、遺言書の内容に納得していない相続人がいる場合、受遺者に引渡そうとしないこともあります。
せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
遺言執行者を選任することで、家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現することができます。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。