任意後見は解除できる

1任意後見とは

任意後見とは、本人の判断能力がしっかりしているうちに、将来、認知症や障害によって判断能力が低下してしまったときに備えて、信頼できる人にやってもらいたいことを決めて、サポートを依頼する契約です。

契約ですから、本人の判断能力がしっかりしているうちしかできません。

この契約は公正証書でする必要があります。

サポートを依頼された人を任意後見人といいます。

任意後見人はひとりでも、何人でも差し支えありません。

この契約は本人がひとりで決めるのが心配になったら、効力が発生して、後見が始まります。

家庭裁判所は、本人がひとりで決めるのが心配になったら、後見監督人を選任します。

つまり、家庭裁判所が後見監督人を選任したら、任意後見契約の効力が発生して、任意後見人が本人のためにサポートを開始します。

任意後見人は適切に仕事をしているか、任意後見監督人にチェックされます。

任意後見監督人は適切に仕事をしているか、家庭裁判所にチェックされます。

だから、安心して任意後見制度を使えます。

この先あれこれ決められなくなる前に、自分らしい生き方を自分で決めよう、サポートを受けて自分らしく生きようという制度です。

2任意後見契約は解除できる

①任意後見監督人選任前は一方的に解除できる

任意後見契約は、本人の判断能力がしっかりしているうちにします。

判断能力がいつ低下するかは人によってそれぞれでしょう。

10年後かもしれません。

20年後かもしれません。

任意後見契約は、任意後見監督人が選任されてからスタートします。

任意後見契約の効力が発生していないうちは、いつでも一方的に解除できます。

本人の判断能力がはっきりしているうちは、本人の同意はなくても解除ができます。

委任契約は一方的に解約できるからです。

任意後見契約を解除する場合、公証人の認証を受けた書面による必要があります。

本人と任意後見人が合意して解除する場合、任意後見契約合意解除書を作成します。

任意後見契約合意解除書に、本人と任意後見人が署名押印のうえ、公証人の認証を受けます。

本人か任意後見人のいずれかが一方的に解除する場合、任意後見契約解除通知書を作成します。

任意後見契約解除通知書に解除する人が署名押印のうえ、公証人の認証を受けます。

解除書を配達証明付き内容証明郵便で相手方に通知します。

配達されたら証明書のハガキが届きます。

②任意後見監督人選任後の解除は正当理由と家庭裁判所の許可が必要

任意後見契約は、任意後見監督人が選任されてからスタートします。

任意後見監督人は、本人が物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなった場合に選任されます。

任意後見がスタートしたということは、本人は物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなっているという意味です。

物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなっているのに、サポートする人がいなくなると本人は困ります。

任意後見監督人が選任された後は、本人を保護するため一方的に解除することはできません。

任意後見契約を解除するためには、家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所は正当な理由がある場合に限り、許可をします。

正当な理由とは、任意後見人の事務が困難と認められる理由です。

具体的には、病気などで療養に専念したい、遠方に転居した、本人や本人の家族と任意後見人の信頼関係がなくなったなどです。

家庭裁判所の許可を得てから、相手方に意思表示をして契約を終了させます。

3任意後見契約を解除したら終了登記

任意後見契約をした場合、公証人が登記申請をしてくれます。

任意後見契約を解除した場合、終了登記は自分でする必要があります。

任意後見契約は、任意後見監督人が選任されてからスタートします。

任意後見監督人が選任される前に任意後見契約を解除する場合も任意後見監督人が選任された後に任意後見契約を解除する場合も、終了登記は必要です。

終了登記は、本人の住所地や本籍地に関係なくすべて東京法務局後見登録課が扱います。

終了登記は、窓口に出向いて申請することも郵送することもできます。

任意後見監督人が選任される前に契約を解除した場合、添付書類は次のとおりです。

①公証人の認証を受けた解除書原本(認証のある謄本でも差し支えありません。)

②配達証明付き内容証明郵便で送ったときの差出人保管の謄本(一方的解除の場合)

③配達証明のハガキ(一方的解除の場合)

任意後見監督人が選任された後に契約を解除した場合、添付書類は次のとおりです。

①任意後見契約解除通知書

②家庭裁判所の許可の審判書

③確定証明書

添付書類は、希望すれば返してもらえます。

返してもらいたい書類がある場合、コピーと返信用封筒を添付します。

コピーに「原本に相違ありません。」と記載して申請人の記名と押印をします。

登記手数料は無料です。

申請に不備があれば連絡がありますが、登記が完了しても連絡はありません。

おおむね、申請が受け付けられてから10日程度で登記が完了します。

終了登記の申請書と一緒に後見登記事項証明書申請書送ると、登記完了後送ってくれます。

後見登記事項証明書は東京法務局以外の法務局でも取得することができます。

4任意後見契約の内容変更でも契約解除の可能性

任意後見契約は、本人の判断能力がしっかりしているうちに締結する契約です。

将来、認知症や障害によって判断能力が低下してしまったときに備えて、信頼できる人にやってもらいたいことを決めて、サポートを依頼します。

信頼できる人にやってもらいたいことを決めてサポートを依頼する点が任意後見契約のポイントです。

信頼できる人とやってもらいたいことは、内容変更をすることはできません。

任意後見人を変更したい場合、現在の任意後見契約をいったん解除してあらためて新たに任意後見契約を締結します。

やってもらいたいことは、代理権目録に記載されています。

代理権目録の内容を変更したい場合、現在の任意後見契約をいったん解除してあらためて新たな任意後見契約を締結します。

新たな任意後見契約でやってもらいたいことを決め直します。

やってもらいたいことを単に増やすだけであれば、追加部分の契約で済みます。

新たな任意後見契約は、公正証書にしなければなりません。

任意後見契約は、必ず公正証書にする必要があるからです。

任意後見は契約ですから、本人が物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなったら契約ができなくなります。

その場合は、成年後見制度を検討する必要があります。

5任意後見を司法書士に依頼するメリット

任意後見とは、本人の判断能力がしっかりしているうちに、将来、認知症や障害によって判断能力が低下してしまったときに備えて、信頼できる人にやってもらいたいことを決めて、サポートを依頼する契約です。

契約ですから、本人の判断能力がしっかりしているうちしかできません。

早め早めに準備するものなので、任意後見が実際にスタートするのは契約してから長期間経過してからです。

実際に任意後見がスタートするまでに事情が変わることもあるでしょう。

任意後見の重要ポイントである任意後見人と代理権の範囲の変更は、契約変更はできません。

いったん契約を解除して、あらためて任意後見契約をする必要があります。

一方で、報酬の変更は重要な内容と言えません。

報酬の変更は、契約の変更で済みます。

契約の変更で済みますが、公正証書にする必要があります。

任意後見契約は締結することばかり注目されがちですが、締結して終わりではありません。

本人のよりよく生きることを支えるために、みんながサポートしています。

任意後見契約を考えている方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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