代償分割で支払う現金がない

1代償分割で公平に遺産分割

①代償分割は代償金を支払ってもらう方法

被相続人の財産には、さまざまな財産があるでしょう。

現金や預貯金は、分けやすい財産です。

不動産は、分けにくい財産です。

相続財産の大部分が不分けにくい財産の場合、相続人全員の合意が難しくなるでしょう。

相続財産の大部分が分けにくい財産の場合、代償分割をすることで合意ができることがあります。

代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分の代償をもらう方法です。

代償金を払ってもらうことで、公平な遺産分割をすることができます。

②代償分割で代償金の決め方

代償分割は、相続財産を分ける方法のひとつです。

どのような方法で相続財産を分けるのか、相続人全員の合意で決定します。

代償分割をすると決めた後、代償金をいくらにするのか相続人全員の合意で決定します。

代償金をいくらにするのかは、遺産分割協議の一部だからです。

不動産は、分けにくい財産の代表例です。

相続財産の大部分が不動産である場合、代償分割は有効です。

公平な遺産分割を実現しやすいからです。

不動産の評価方法は、複数あります。

代償分割の対象が不動産である場合、不動産の評価額をいくらと考えるかで話し合いがまとまらないおそれがあります。

不動産には、次の評価方法があります。

(1)公示地価

国土交通省が発表する1平方メートルあたりの標準価格です。

国土交通省という国の機関が発表しているから、信用があります。

(2)相続税評価額(路線価方式)

相続税や贈与税を申告するときに使う評価額です。

申告の便宜を図るため、国税局が発表します。

路線価は、公示価格の80%になるように定められています。

(3)固定資産税評価額

固定資産税を計算するときに使う評価額です。

固定資産税を課税するため、各市町村が発表します。

固定資産税評価額は、公示価格の60%になるように調整されています。

(4)時価

実際に、売買されるときの金額です。

市場の需要と供給で、決まります。

(5)鑑定評価額

不動産鑑定士が業として鑑定した評価額です。

公平な評価が必要なときに、用いられます。

評価方法によって、不動産の評価額は大きく異なります。

どの評価方法を採用するのか、相続人全員の合意で決定します。

どの評価方法を採用するのか決められないと、不動産の評価額をいくらと考えるか決められなくなります。

不動産をどの評価方法を採用して評価額をいくらと考えるのか、相続人全員の合意で決定します。

代償金をいくらにするのか、相続人全員の合意で決定します。

③代償分割は遺産分割協議書に明記

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人全員の合意内容がまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。

遺産分割協議書とは、相続人全員の合意内容の証明書です。

書面に取りまとめた後、相続人全員に合意内容に間違いないか確認してもらいます。

間違いなければ、相続人全員が記名し実印で押印してもらいます。

遺産分割協議書の押印が実印によることを証明するために、印鑑証明書を添付します。

代償分割をする合意をした場合、遺産分割協議書に明記します。

遺産分割協議書に書いてない場合、単なる贈与であると判断されるおそれがあります。

単なる贈与と判断された場合、贈与税の対象になるでしょう。

贈与税は、想像以上に高額になりがちです。

代償分割の合意をした場合、遺産分割協議書にはっきり明記します。

2代償分割で支払う現金がない

①分割払いで滞納のリスクがある

代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分の代償をもらう方法です。

代償の支払は、一括払いが一般的です。

相続人が合意できるのであれば、分割払いにすることができます。

代償金の支払いを分割払いにした場合、将来、支払われなくなるリスクがあります。

将来、代償金が支払われなくても、債務不履行で解除はできません。

確実に支払ってもらうために、代償金を分割払いにすることができます。

分割払いにすると、滞納リスクがあります。

滞納リスクを承知したうえで、分割払いの合意をすることができます。

②不動産などで支払うと譲渡所得税の対象

代償の支払は、現金が一般的です。

代償金が支払えない場合、当事者が合意できれば、金銭以外の財産を代償にすることができます。

代償を支払う相続人が固有の財産である不動産を代償として、譲渡することができます。

代償として譲渡する不動産は、相続が発生したときの時価で譲渡されたと判断されます。

固有の財産を取得したときから相続が発生したときまでに、不動産が値上がりしていることがあります。

値上がり益に、譲渡所得税が課されます。

不動産を手放すうえに、譲渡所得税の対象になります。

代償の支払いを確実にするため代償を金銭以外にすることができるけど、税金に注意が必要です。

譲渡所得税が課されるデメリットを承知したうえで、現金以外の財産で支払うことができます。

③代償分割より換価分割

代償分割は、任意に代償を払ってもらう方法です。

代償金が払われない場合、そもそも代償分割が適切でないかもしれません。

相続財産の分け方には、換価分割の方法があります。

換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。

売却代金を分けるから、代償金を払ってもらえないと心配する必要はありません。

換価分割では、不動産を売却してお金に換えます。

せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられて、話し合いがまとまらなくなる点がデメリットです。

家族が守ってきた不動産を手放すデメリットを承知したうえで、換価分割が適切かもしれません。

④代償分割より分筆

代償分割は、任意に代償を払ってもらう方法です。

代償金が払われない場合、そもそも代償分割が適切でないかもしれません。

相続財産の分け方には、現物分割の方法があります。

現物分割とは、財産現物を分けて相続する方法です。

土地であれば、分筆して相続します。

便利がいい場所にある不動産は、小さくても高い評価額になることがあります。

分筆すると、小さくなりすぎて使い勝手が悪くなる点がデメリットです。

極端に小さな不動産は、財産的価値が低くなるでしょう。

小さくなりすぎて評価額が低くなるデメリットを承知したうえで、分筆した方が適切かもしれません。

⑤金融機関から借り入れ

不動産を購入するときに、金融機関から借り入れをすることがあります。

金融機関によっては、代償分割における代償金の支払いのために借り入れをすることができます。

代償分割で代償金の支払いが必要になる場合、不動産を相続しているでしょう。

相続した不動産を担保に差し入れることで、まとまった金額を借り入れることができます。

一般的に言って代償金の支払いのためにローンを組む場合、住宅ローンより高利になりがちです。

高利になるデメリットを承知したうえで、金融機関から借り入れをすることができます。

⑥共有はデメリットが大きい

代償金の支払いがなくても、債務不履行で遺産分割協議を一方的に解除することはできません。

相続人全員が合意できれば、遺産分割協議のやり直しができます。

代償金を支払う現金がない場合、不動産を共有するのが公平に見えるかもしれません。

共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分ができません。

不動産を自由に使うことができないから、共有者間でトラブルになりがちです。

共有の不便を解消するために、共有物分割協議をすることになるでしょう。

不動産の共有はデメリットが大きいので、おすすめできません。

3代償金の支払いに応じないときの対処法

相続財産の分け方について相続人全員合意ができた場合、遺産分割協議は成立します。

遺産分割協議で代償金を払うと約束したのに払ってもらえない場合でも、一方的に解除することはできません。

遺産分割協議の合意内容を守ってもらえない場合、遺産分割後の紛争調整調停を申し立てることができます。

遺産分割協議が成立してから長期間経過した後に、紛争調整調停を申し立てることができます。

調停とは、裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。

当事者同士で話し合いをした場合、感情的になってしまうかもしれません。

家庭裁判所の調停委員と話をすると、冷静に話ができるでしょう。

家庭裁判所の調停委員から公平な意見を根拠にしてアドバイスがされると、納得しやすくなるでしょう。

代償金の支払いについて合意ができた場合、合意内容は調停調書に取りまとめます。

調停調書の内容は、裁判による判決と同様の効力が与えられます。

代償金が支払われない場合、強制執行をすることができます。

②代償金支払い請求訴訟を提起

遺産分割後の紛争調整調停は、当事者の話し合いです。

話し合いで合意を目指します。

遺産分割後の紛争調整調停で話し合っても合意ができない場合、代償金支払い請求訴訟を提起することができます。

代償金支払い請求訴訟は、通常の裁判です。

家庭裁判所でなく、地方裁判所や簡易裁判所の管轄です。

当事者の話し合いで合意できる見込みがない場合、調停をせずに代償金支払い請求訴訟を提起することができます。

代償金支払い請求訴訟を提起した後、判決を得るには相当の時間と費用がかかります。

③遺産分割協議書を公正証書にすると直ちに強制執行

相続財産の分け方について相続人全員が合意できた場合、合意内容は書面に取りまとめます。

多くの場合、遺産分割協議書は私文書で作成します。

代償金の支払いを確実にするため、遺産分割協議書を公正証書にしてもらうことができます。

公正証書で遺産分割協議書を作成した場合、強制執行認諾文言を入れることができるからです。

強制執行認諾文言とは「代償金が支払われない場合、直ちに強制執行に服する」といった文言です。

強制執行認諾文言がある場合、公正証書は裁判による判決と同様の効力が与えられます。

代償金が支払われない場合、直ちに強制執行をすることができます。

④法定相続分で相続登記ができる

被相続人が不動産を持っていた場合、不動産について相続登記をします。

遺産分割協議で、相続人のひとりが不動産を相続する合意をするでしょう。

多くの場合、遺産分割協議で決めた相続人に名義変更をします。

代償金の支払いを担保するため、相続人全員で法定相続分で登記をすることができます。

相続人全員の登記名義があるから、勝手に売却したり担保に差し出すことができなくなります。

単独所有の相続登記を先行させた場合、代償金の支払をうやむやにされるおそれがあります。

代償金の支払いをしないと名義変更に応じてもらえないことは、分かるでしょう。

法定相続分で相続登記をすることで、プレッシャーをかけることができます。

4遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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