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1寄与分で例外的に相続分を調整する
①相続の基本原則は法定相続分
相続人が相続する相続分は、法律で決められています。
相続の基本原則は、法定相続分による遺産分割です。
②財産の維持増加に限定して寄与分で調整する
寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。
寄与分で評価されるのは、財産の維持増加のみです。
寄与分が認められるのは、直接的に財産の維持増加に貢献することが条件です。
直接的に財産の維持増加に貢献したときに限って、例外的に相続分を調整します。
③具体的で直接的な因果関係が必要
寄与分が認められるためには、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をしたことが重要です。
被相続人の財産の維持・増加と特別な貢献に、具体的で直接的な因果関係が必要です。
・単なる好影響
・間接的なプラス効果
・結果的に助かった
上記のようなレベルでは、寄与分は認められません。
寄与分を主張する人の行為と財産の維持・増加が直接結びついていることが重要です。
仮定を積み重ねる多段階連鎖推論では、寄与分は認められません。
風が吹けば桶屋が儲かる程度では、推測に過ぎないからです。
寄与分は例外的制度だから、相続の基本を崩すだけの客観的合理性が必要です。
④家庭裁判所は客観的証拠で判断
家庭裁判所は、何も知らない第三者です。
家族の関係性や役割分担を共有していません。
家庭裁判所は、客観的証拠で判断します。
現実には、長期間経過する中で記憶があいまいになります。
頑張った努力したなどの主観的主張のみで、数値化できないことがあります。
たとえ多大な貢献をしても具体的な行為を客観的証拠で説明しないと、寄与分は認められません。
具体性が欠けると、寄与分として評価できません。
例外を認めるに足りる客観的合理性を支えるため、客観的証拠で判断します。
⑤寄与分が認められるための最低条件
条件(1)扶養義務を明確に超える行為
条件(2)財産の維持・増加との直接因果関係
条件(3)金額として算定可能
条件(4)客観証拠が充分に存在
条件(5)他の相続人の減額を正当化できる合理性
⑥家庭裁判所が寄与分を慎重に審査する理由
理由(1)相続の基本原則に対する例外的調整だから
寄与分の制度は、例外です。
例外が広く認められると、相続手続の安定性が崩壊します。
裁判所は寄与分を慎重に審査して、相続の基本原則を維持します。
理由(2)相続人全員の公平のため
寄与分が認められると、他の相続人の相続分が減少します。
法定相続分は、法律が定めた分配の原則です。
寄与分が目指す公平は、相続人全員の公平です。
他の相続人の減額を正当化できるか、客観的証拠で慎重に審査します。
理由(3)扶養義務との境界があいまいだから
家族には、扶養義務があります。
通常の家事・介護・見守りは、扶養義務の範囲内です。
寄与分が認められるのは、扶養義務の範囲の明確に超える特別の寄与のみです。
扶養義務の範囲であるのか、慎重に審査する必要があります。
理由(4)感情的対立が極端に強いから
主観的評価には、客観的な基準がありません。
寄与分では財産の維持・増加についてのみ、限定的に評価します。
裁判所は、紛争を解決する機関だからです。
2寄与分が認められるケースと必要になる証拠
ケース①被相続人の事業への無償従事
(1)裁判所が重点的に審査するポイント
・好景気や市場拡大によるものではないか
・他の役員や従業員の貢献ではないか
・通常の報酬を受けていないか
(2)経済的効果の立証ポイント
経済的効果は、金額の算定可能が必須です。
感覚的評価ではなく、財務分析レベルの立証が必要です。
具体的には、次の資料を準備します。
・決算書、損益計算書、貸借対照表
・月次売上資料、試算表
(3)直接的因果関係の立証ポイント
行為と利益増加に、具体的な因果関係が必要です。
単なる好景気や市場拡大ではなく、合理的な因果関係を立証します。
具体的には、次の資料を準備します。
・主要取引契約書、新規顧客契約書
・事業計画書、改善提案書
・銀行などの交渉資料、融資契約資料
いずれも関与した人が明確に分かる必要があります。
関与した人が分からないと、直接的因果関係が立証できないからです。
(4)特別性の立証ポイント
特別性とは、他の相続人より明らかに大きな貢献をしていることです。
単なる家族の家族の手伝い程度を超えて、経営判断に関与していることを立証します。
具体的には、次の資料を準備します。
・株主総会議事録、取締役会議事録
・社内組織図、職務分掌表
(5)無償性・低報酬性の立証ポイント
通常の報酬や給与を受け取っていた場合、寄与分で評価はされません。
具体的には、次の資料を準備します。
・給与明細、賃金台帳
(6)理論上認められ得る典型例
・赤字会社を黒字化
・破産を回避
・大口取引の獲得
ケース②不動産管理で家賃収入増加
(1)裁判所が重点的に審査するポイント
・市場全体の賃料上昇ではないか
・職業的・専従的管理であるか
・他人の貢献ではないか
(2)経済的効果の立証ポイント
不動産管理の前後で、増加額を立証します。
具体的には、次の資料を準備します。
・不動産管理前後の家賃収入一覧表、
・確定申告書の控え、通帳の写し
(3)直接的因果関係の立証ポイント
行為と賃料増加に、説明可能な因果関係が必要です。
具体的な管理行為によって賃料増加になったことを立証します。
具体的には、次の資料を準備します。
・管理物件の空室率推移資料、地域全体の空室率推移資料
・賃料台帳、地域全体の賃料相場資料
・リフォーム提案書、工事契約書、施工前後写真
・滞納賃料の回収資料、交渉記録、和解契約書
同じ地域・同種物件との比較で差が出ていないと、景気要因と判断されます。
リフォームと賃料上昇に時間が経過していると、因果関係が否定されやすくなります。
(4)特別性の立証ポイント
被相続人や他の相続人が関与せず、一手に管理会社レベルの業務をしたことを立証します。
管理業務の専門性と専従性、継続性の立証が重要ポイントです。
単なる鍵の受け渡し程度では、寄与分は認められません。
具体的には、次の資料を準備します。
・高齢で管理不能である医療記録、診断書
・不動産業者の陳述書、メール記録、更新契約書の署名者
・鍵の管理記録、銀行振込手続き履歴、クレーム対応履歴
(5)無償性・低報酬性の立証ポイント
相当な対価を受けている場合は、原則として寄与分は否定されます。
管理委託契約があれば、契約対価で評価済と判断されます。
具体的には、次の資料を準備します。
・決算書
(6)理論上認められ得る典型例
・長期間空室物件を立て直した
・大規模滞納を回収
・老朽物件を改善し高収益化
ケース③不動産の大規模改修・価値増加行為
(1)裁判所が重点的に審査するポイント
・大規模修繕をだれが主導したか
・自己資金を拠出または無償で実行
・大規模修繕により客観的価値が増加したか
(2)経済的効果の立証ポイント
通常の修繕ではなく、大規模修繕が重視されます。
例えば、外壁全面改修、屋上防水全面更新、耐震補強などです。
具体的には、次の資料を準備します。
・不動産の鑑定評価書、収益還元法による試算書、家賃単価上昇資料
(3)直接的因果関係の立証ポイント
不動産の管理は、不動産価値の減少を防ぐ行為です。
不動産の大規模修繕は、不動産価値を増加させる行為です。
不動産投資の側面が強くなります。
不動産投資によって、財産価値が上昇したことを数字で指名すことが重要です。
具体的には、次の資料を準備します。
・不動産の鑑定評価書、収益還元法による試算書、家賃単価上昇資料
(4)特別性の立証ポイント
大規模修繕は、自己資本の投入、経営判断、リスク負担を伴います。
だれでもできるものではないと、判断されやすいです。
具体的には、次の資料を準備します。
・工事請負契約書、見積書、請求書
・振込記録、施工前後の写真、工事内容説明書
(5)無償性・低報酬性の立証ポイント
相当な対価を受けている場合は、原則として寄与分は否定されます。
(6)理論上認められ得る典型例
・賃貸物件の大規模修繕を自己責任で行って家賃収入を増加した
・自己資本を投入して建物改修し資産価値向上
ケース④専門職レベルの医療・看護
(1)裁判所が重点的に審査するポイント
・医師や看護師などが本来は有償で提供される高度医療・専門的処置を無償で提供したか
・扶養義務の範囲を明確に超えているか
・専門的役務に市場価値があるか
・財産維持との具体的直接的因果関係
・無償であるか
(2)直接的因果関係の立証ポイント
●医学的管理の不可欠性
要介護度が高い、医療依存度が高い、24時間観察が必要であることは、医学的管理の不可欠性を示します。
具体的には、次の資料を準備します。
・主治医による意見書、処置内容の指示書
・要介護認定の資料、医療記録
●実際に専門的医学管理を行ったこと
単なる見守りでは、不足です。
専門職レベルの医療・看護は、扶養義務の範囲を超すことが明らかです。
家族の助け合いで、専門職レベルの医療・看護はできないからです。
医師や看護師であっても、単なる家事介護が認められません。
点滴管理、褥瘡デブリードマン、経管栄養管理など、専門的判断を必要とする行為であることを立証します。
具体的には、次の資料です。
・医師や看護師などの免許証、資格証、登録済証明書
・在宅で医療的管理が必要だったことの主治医による診断書、具体的処置内容の指示書
・処置記録や看護記録、主治医への報告記録
●施設入所や入院の蓋然性の高さ
施設入所や入院がほぼ確実であったことが重要です。
具体的には、次の資料です。
・主治医による医療型施設入所の意見書、ケアマネジャーによる意見書、ケアプラン
・施設の空床確認書
●代替可能性の低さ
制度上可能であったかではなく、現実的に代替可能であったかを重視します。
現実的に代替可能であったかとは、制度利用では対応しきれない状態です。
介護保険限度内で収まるケースやヘルパー利用で足りるケースでは、財産維持との因果関係が弱いと判断されます。
具体的には、次の資料です。
・ケアプランやサービス利用限度額資料、訪問看護単位数試算表
・主治医による常時観察の指示書、頻回の対応記録、急変記録
●専従性・継続性
短期では、認められにくいでしょう。
数年単位で、ほぼ専従状態であることが重要です。
具体的には、次の資料です。
・勤務時間短縮記録、退職証明書
(3)経済的効果との立証ポイント
医師や看護師による専門的役務には市場価値があり、客観的な市場単価があります。
診療報酬基準があるからです。
いくらの経済的価値を無償提供したか、客観的に明確にしやすいと言えます。
具体的には、次の資料を準備します。
・施設の見積書、月額利用料試算表
(4)無償性・低報酬性の立証ポイント
相当の対価を得ていた場合、寄与分で評価するのは二重評価になります。
無償であるか著しい低報酬であることが重要です。
具体的には、次の資料を準備します。
・入金が分かる通帳の写し
(5)特別性の立証ポイント
単なる家族の助け合いを超えて、専門職レベルの医療・看護を行ったことが重視されます。
具体的には、次の資料を準備します。
・医師や看護師などの免許証、資格者証、登録証明書
(6)理論上認められ得る典型例
・医療依存度が極めて高い在宅管理
・実際に入所・入院を検討していたが回避した
・公的サービス上限を超える医療対応が必要だった
3家族による家事介護は寄与分で評価されにくい理由
理由①頑張ったことは評価されない
寄与分は、財産の維持増加のみ限定的に評価する制度です。
家事や介護で頑張ったことは、法的に評価されません。
理由②家族としての自然な行為
家族は、扶養義務があります。
家族の助け合いの範囲内の行為は、特別な貢献とは言えません。
理由③生活維持が目的の行為
食事、入浴、排せつなどの介護や買い物、掃除などの家事は、日常生活を維持する行為です。
財産の維持増加とは無関係な行為は、寄与分で評価されません。
理由④因果関係を立証できない
家事や介護によって財産がいくら維持増加したのか、客観的数字で示すことは困難です。
施設費用を節約できたとしても、仮定を積み重ねる多段階連鎖推論で寄与分は認められません。
理由⑤客観的証拠がほとんどない
日常生活の世話は、長期間に渡ります。
客観的資料は、散逸しがちです。
客観的資料がないと、主観的主張だけでは裁判所は判断できません。
4生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書作成は、相続手続最大の山場です。
相続財産の分け方を決めるのは、トラブルになりやすい手続だからです。
被相続人の事業を手伝っていた、療養看護に努めた相続人がいる場合、この苦労を相続で報いてもらいたいと思います。
高いハードルを越えて寄与分が認められた場合であっても、本人が思うような金額になることはほとんどありません。
法律で実質的公平が図られるのは、残念なことですが事実上困難です。
相続手続が大変だったという人は、分け方を決めることができないから大変だったのです。
生前に相続財産の分け方を対策しておくことが相続をラクにします。
相続財産の分け方が決まれば、遺産分割協議書作成は一挙にラクになります。
相続手続がラクに済めば、家族の絆が強まります。
家族の幸せのために、生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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