遠方の実家を相続したら

1遠方の実家相続が難しい理由

理由①遠方の実家に出向く時間と費用が負担

相続する不動産は、必ずしも、自宅だけとは限りません。

就職や進学で、実家を離れた後、そのまま実家に住んでいないこともあるでしょう。

現在住んでいる自宅から遠く離れた実家を相続することがあります。

遠方の実家の相続のため、出向く時間と費用を負担することになります。

何度も遠方の実家に出向くと、時間や費用が重くのしかかってきます。

理由1つ目は、遠方の実家に出向く時間と費用が負担です。

理由②書類の準備や手続が複雑

相続手続は、何度も経験することはあまりないでしょう。

だれにとっても不慣れで、初めてのことばかりです。

相続手続には、たくさんの書類が必要になります。

知識がないと、書類の不備ややり取りのミスが起きやすいでしょう。

遠方だと、相続手続先や相続人間の調整が難しくなります。

理由2つ目は、書類の準備や手続が複雑です。

理由③実家の維持管理が負担

遠方の実家に、だれも住まないことがあります。

空き家状態になると、建物は劣化しやすくなります。

空き家になった実家のメンテナンスのため、定期的に出向く必要があるでしょう。

庭などに雑草が生い茂ると、治安が悪化したり病害虫が繁殖するおそれがあります。

遠方だと、実家の維持管理の負担が重くのしかかってきます。

理由3つ目は、実家の維持管理が負担です。

理由④相続人間の合意形成が難しくなりがち

遠方の実家を相続するため、遺産分割協議が必要です。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方を決めるため相続人全員でする話し合いです。

相続人が各地に住んでいる場合、遺産分割協議が難航しがちです。

話し合いが進展しないまま長期間経過することで、家族関係が悪化することがあります。

理由4つ目は、相続人間の合意形成が難しくなりがちです。

理由⑤相続税が高くなる

相続財産全体の規模が一定以上である場合、相続税の対象になります。

相続人が実家に同居していないと、小規模宅地の特例が使えないことが多いでしょう。

小規模宅地の特例とは、相続税の負担を軽減する制度です。

理由5つ目は、相続税が高くなるです。

2遠方の実家を相続したら

①相続手続の基本の流れ

手順(1)相続人調査

相続人になる人は、法律で決められています。

相続人は、戸籍謄本で確認します。

具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて用意します。

戸籍謄本収集が難しいときは、司法書士などの専門家に依頼することができます。

手順1つ目は、相続人調査です。

手順(2)相続財産調査

被相続人の財産は、相続人が相続します。

どのような財産があるのか、確認します。

相続財産調査が難しいときは、司法書士などの専門家に依頼することができます。

手順2つ目は、相続財産調査です。

手順(3)相続の承認・相続放棄

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、3か月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

家庭裁判所が相続放棄を認めたら、はじめから相続人でなくなります。

手順3つ目は、相続の承認・相続放棄です。

手順(4)相続人全員で遺産分割協議

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

相続人全員の合意がまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。

相続人全員の合意がまとまらないと、長期間かかることがあります。

手順4つ目は、相続人全員で遺産分割協議です。

手順(5)名義変更

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容の証明書です。

相続人全員の合意内容に従って、名義変更をします。

手順5つ目は、名義変更です。

②戸籍謄本の広域交付が利用できる

相続人調査では、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を用意します。

戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求するのが原則です。

戸籍謄本の広域交付とは、本籍地以外の市区町村役場で戸籍謄本を取得できる制度です。

例えば、名古屋市内に本籍地がある人が名古屋市以外の市区町村役場で戸籍謄本を取得することができます。

名古屋市外に本籍地がある人が名古屋市内の各区役所で戸籍謄本を取得することができます。

籍謄本の広域交付を利用すると、近隣の市区町村役場で戸籍謄本を請求できるから便利です。

③戸籍謄本等は郵送請求ができる

広域交付で取得できるのは、次の人の戸籍謄本のみです。

・本人

・直系血族

例えば、兄弟姉妹は直系血族ではありません。

兄弟姉妹の戸籍謄本が必要な場合、広域交付を利用することはできません。

広域交付を利用できない場合、郵送で請求することができます。

本籍地の市区町村役場に出向くより、戸籍謄本を郵送請求するのは負担が少ないと言えるでしょう。

戸籍謄本等は、郵送請求ができます。

④電話などで遺産分割協議ができる

相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。

相続人全員の合意ができれば、一堂に会する必要はありません。

電話やメールで、相続財産の分け方の合意をすることができます。

⑤遺産分割協議証明書を活用

相続人全員の合意がまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。

合意内容を取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。

相続人全員が集まりやすい場合、一般的に1枚の遺産分割協議書に相続人全員が記名し実印で押印します。

相続人が各地に住んでいる場合、郵送で遺産分割協議書を送って記名押印をしてもらうことができます。

郵送で遺産分割協議書を一巡していくことになります。

途中で紛失すると、最初からやり直しになります。

遺産分割協議証明書は、相続人の人数分の書面を用意し各相続人が記名し実印で押印します。

遺産分割協議証明書では、相続人全員に一斉発送し、記名押印後返送してもらいます。

紛失した場合、紛失した相続人の分だけやり直しになります。

遺産分割協議証明書では、紛失リスクを軽減することができます。

⑥相続登記で法務局に出向く必要はない

被相続人が不動産を保有していた場合、不動産の名義変更をします。

相続登記とは、不動産の名義変更です。

相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。

相続登記の申請で、管轄の法務局に出向く必要はありません。

郵送で申請書と添付書類を提出することができます。

⑦相続人の近くの司法書士に依頼できる

相続登記は、たくさんある相続手続の中でも難しい手続です。

司法書士などの専門家におまかせしたい人もいるでしょう。

多くの司法書士は、オンラインで相続登記を申請しています。

日本中どこの法務局でも、申請することができます。

提出書類は、別途郵送で提出することができます。

遠方の実家近くの司法書士に、依頼する必要はありません。

相続人の近隣の司法書士に依頼する方が都合がいいでしょう。

相続人の近くの司法書士に依頼できます。

3遠方の実家の管理と負担

①維持管理に手間がかかる

遠方の実家を相続すると、実家のメンテナンスが負担になります。

建物の劣化を防止するため、風通しをする必要があるでしょう。

実家周辺の草刈りや清掃などの実作業は、大きな負担になりがちです。

②固定資産税がかかり続ける

不動産を保有していると、固定資産税の対象になります。

使わない実家であっても、固定資産税がかかり続けます。

③近隣に損害を与えるおそれ

固定資産税を納めるだけで放置していると、近隣に迷惑をかけるおそれがあります。

老朽化した建物が崩れかかって、通行人などに危害を及ぼすかもしれません。

台風などの災害時には、屋根や塀が飛ばされるかもしれません。

何かあっても、すぐに対応するのは難しいことが多いでしょう。

近隣に損害を与えると、損害賠償をしなければなりません。

4相続登記の放置はデメリットが多い

①相続登記義務化でペナルティーが課される

遠方の実家相続が難しくなりがちです。

相続登記の放置はデメリットが多く、おすすめできません。

相続登記には、3年の期限が決められました。

相続登記の義務を果たしていないと、ペナルティーが課されます。

ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。

②新たな相続発生で遺産分割協議が複雑化

遺産分割協議は、相続人全員の合意で成立します。

遺産分割協議を先延ばししたまま長期間経過した場合、元気だった相続人が死亡することがあります。

相続人が死亡すると、死亡した相続人の相続人が遺産分割協議を引き継ぎます。

死亡した相続人の相続人は、関係が薄いことが多いでしょう。

死亡した相続人の相続分は、細分化されて相続人に引き継がれます。

遺産分割協議に参加する人が増えると、遺産分割協議は複雑化してまとまりにくくなります。

③相続人か認知症になると成年後見人選任

遺産分割協議を先延ばししたまま長期間経過した場合、元気だった相続人が認知症になることがあります。

認知症になると、自分で遺産分割協議をすることはできません。

認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなるからです。

認知症の相続人のために、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう必要があります。

認知症の相続人に代わって成年後見人が遺産分割協議に参加します。

④第三者と共有のおそれ

相続人には、さまざまな経済状況の人がいます。

相続人が借金を抱えていることがあります。

債権者は債権の保全のため、債務者の財産を差し押さえることができます。

差押など強制執行の準備のため、相続登記を申請することができます。

差押などの強制執行をするためには、相続人名義である必要があるからです。

差押の後は、競売をして債権を回収します。

債権者は、債務者の事情などお構いなしで登記します。

相続人全員の話し合いによる合意がどうなったのか、待つことはありません。

相続登記を放置すると、第三者と共有のおそれがあります。

5遠方の実家を相続するときに司法書士に依頼するメリットとデメリット

メリット①戸籍謄本や住民票の収集代行

相続手続では、たくさんの戸籍謄本や住民票を準備する必要があります。

戸籍謄本の広域交付で取得できないと、郵送で請求する必要があります。

本籍地の市区町村役場に出向く必要がないものの、手間と時間がかかります。

司法書士に依頼すると、戸籍謄本や住民票を収集代行をしてもらうことができます。

メリット1つ目は、戸籍謄本や住民票の収集代行です。

メリット②遺産分割協議書の作成

実家を相続する場合、遺産分割協議書を作成して相続登記をします。

遺産分割協議書を適切に作成していないと、相続登記ができなくなります。

司法書士に依頼すると、適切な遺産分割協議書を作成してもらうことができます。

メリット2つ目は、遺産分割協議書の作成です。

メリット③相続登記の正確性と迅速化

相続登記は、難しい手続です。

不動産は重要な財産だから、法務局は非常に慎重に審査をするからです。

司法書士に依頼すると、相続登記を代理してもらうことができます。

複雑な相続であっても、司法書士が遠方の法務局とやり取りをします。

正確迅速に手続をしてもらうことができます。

メリット3つ目は、相続登記の正確性と迅速化です。

デメリット①費用がかかる

自分で相続登記をしても、登録免許税がかかります。

司法書士に依頼すると、追加で司法書士報酬がかかります。

遠方の不動産であっても近隣の不動産であっても、同様の費用がかかります。

デメリット1つ目は、費用がかかることです。

デメリット②専門領域外は依頼できない

司法書士は、登記の専門家です。

専門領域外は、依頼できません。

相続人間のトラブルに発展したら、原則として弁護士に依頼します。

税理士は、税金の専門家です。

相続税申告が必要なら、原則として税理士に依頼します。

デメリット2つ目は、専門領域外は依頼できないことです。

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