このページの目次
1家族信託と相続放棄は安全な制度
①家族信託は安全な制度
(1)家族信託とは財産の管理処分を依頼する契約
家族信託とは、家族間で財産の管理処分を依頼する契約です。
家族信託の登場人物は、主に次の3者です。
・委託者 財産の管理処分を依頼する人
・受託者 財産の管理処分を任される人
・受益者 財産から得られる利益を受け取る人
信託契約をする場合、契約当事者に判断能力が必要です。
信託契約の定めに従って、受託者が自由に財産を管理処分することができます。
委託者の認知症対策で家族信託をする場合、委託者と受益者は同じ人です。
委託者兼受益者が重度の認知症になった後で、信託契約をすることはできません。
家族信託をすれば、たとえ委託者が認知症になっても財産が凍結されることがありません。
信託契約の範囲内で、受託者が財産を管理処分するからです。
受託者が適切に財産管理をする範囲において、危険はありません。
(2)家族信託に遺言書の機能がある
家族信託をするとき、契約書でさまざまなことを決めておきます。
信託契約で、家族信託が終了する理由を決めておくことができます。
信託契約で、帰属権利者を決めておくことができます。
帰属権利者とは、家族信託が終了したとき残った信託財産を引き継ぐ人です。
委託者の相続人でも相続人以外の人でも、帰属権利者に指名することができます。
信託終了による信託財産の引継ぎは、相続ではないからです。
遺言書を作成する場合、遺言者の財産を引き継ぐ人を指名することができます。
遺言書がある場合、遺言書の内容どおり遺産分割をすることができます。
認知症対策で家族信託をする場合、委託者の死亡で家族信託を終了させることが一般的です。
委託者の死亡で家族信託が終了した場合、信託契約の内容どおりに信託財産を引き継ぎます。
家族信託で残った信託財産を引き継ぐことと遺言書で財産を引き継ぐことは、同じ機能と言えます。
家族信託には、遺言書の機能があります。
遺言書の機能を適切に活用する範囲において、危険はありません。
②相続放棄は安全な制度
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄をした人は、相続財産を一切引き継ぎません。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、撤回することはできません。
撤回とは、相続放棄が受理されたときには何も問題がなかったのに、後から問題が発生したので、なかったことにすることです。
「借金ばかりと思っていたから相続放棄をしたのに、莫大なプラスの財産が見つかったから相続放棄はなかったことにしたい」は、撤回です。
相続放棄は、撤回できません。
相続放棄が認められたのに撤回を認めると、相続の現場が混乱するからです。
適切に相続放棄をする範囲において、危険はありません。
2家族信託と相続放棄の危険な組合せ
①信託財産は独立した財産になる
信託財産とは、信託契約で管理処分を依頼した財産です。
家族信託をすると、信託財産は受託者名義になります。
受託者名義になるけど、受託者の固有の財産になるわけではありません。
信託契約によって、管理処分を依頼されただけだからです。
信託財産は、委託者の固有の財産とは別に扱われます。
信託財産は、受託者の固有の財産とは別に扱われます。
委託者の財産ではなく受託者の財産でもない、独立した財産です。
信託財産は受託者の名義になっているだけで、独立した財産です。
②相続放棄の効力は相続財産にのみ及ぶ
家族信託をしても、相続人は相続放棄をすることができます。
相続放棄をした人は、相続財産を一切引き継ぎません。
相続放棄で引き継ぐことができないのは、相続財産のみです。
家族信託をした場合、委託者が管理処分を依頼した財産は信託財産です。
信託財産は、委託者の固有の財産とは別に扱われます。
委託者が死亡したら、委託者の固有の財産のみ相続財産になります。
委託者の死亡で家族信託が終了する場合、信託財産は帰属権利者が引き継ぎます。
帰属権利者が相続人であっても相続人でなくても、帰属権利者が引き継ぎます。
帰属権利者が相続放棄をしても単純承認をしても、信託契約は影響を受けません。
信託財産を引き継ぐのは、相続ではないからです。
③借金逃れで家族信託を悪用することはできない
(1)委託者に借金があるケースで問題になる
信託財産は、委託者の固有の財産ではありません。
委託者が死亡しても、信託財産は相続財産になりません。
帰属権利者が相続人であっても相続人でなくても、帰属権利者が引き継ぎます。
委託者に莫大な借金がある場合、問題になることがあります。
委託者の財産がわずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産であるケースです。
信託契約を締結して、わずかなプラスの財産すべてを信託財産にすることが考えられます。
莫大なマイナスの財産は、委託者の固有の財産のままです。
この後、委託者が死亡した場合、相続人は相続放棄をするでしょう。
(2)原則どおりでは債権者に理不尽な結果になる
原則どおりなら、わずかなプラスの財産は帰属権利者が引き継ぎます。
原則どおりなら、莫大なマイナスの財産は相続人は引き継ぎません。
多くの場合、帰属権利者は委託者に近い関係の家族です。
相続が発生したら、相続人になるでしょう。
わずかなプラスの財産を引き継いで莫大なマイナスの財産を引き継がないことになってしまいます。
原則どおりでは、債権者に理不尽な結果になってしまいます。
(3)詐害信託は取消請求ができる
債権者は裁判所に訴えて、詐害信託の取消し請求をすることができます。
詐害信託の取消し請求では、受託者が裁判の被告になります。
詐害信託とは、債権者を害することを知って設定した信託です。
借金逃れで信託契約をした場合、委託者兼受益者は債権者を害することを知っているはずです。
委託者兼受益者は、自分の経済状況を知っているからです。
自分の財産状況から主要な財産を信託すれば、債権者を害することは分かります。
委託者兼受益者が債権者を害することを知って設定した信託は、詐害信託です。
委託者兼受益者が認知症などで認識できなかったら、詐害信託以前の問題です。
契約当事者に充分な判断能力がない場合、家族信託は無効だからです。
有効に信託契約をするためには、充分な判断能力が必要です。
受託者は債権者を害することを知っていても知らなくても、関係はありません。
受託者は、委託者から信託財産を管理処分を依頼されただけの人だからです。
信託財産を預かっているだけだから、知っていても知らなくても保護する必要がありません。
受託者が債権者を害することを知らなかったと主張しても、詐害信託になります。
裁判所に詐害信託と認められたら、信託は取り消されます。
(4)信託が取消されると信託財産は固有の財産に復帰する
信託が取消されると、信託財産は委託者の固有の財産に復帰します。
信託財産は、もともと委託者の固有の財産だったからです。
委託者が死亡したら、委託者の固有の財産は相続財産になります。
固有の財産は相続財産だから、相続人が引き継ぎます。
相続放棄をした人は、相続財産を一切引き継ぎません。
信託が取消されても、相続放棄は撤回できません。
相続放棄の撤回を認めると、相続の現場が混乱するからです。
④家族信託の悪用は発覚する
(1)不動産を信託すると登記簿で公示される
家族信託をする場合、自宅などの不動産を信託財産にすることがほとんどです。
不動産を信託財産にした場合、次の事項が登記簿にに記録されます。
・所有者 受託者
・信託による所有権移転であること
・信託目録
不動産の登記簿謄本は、だれでも取得することができます。
登記簿の内容は個人情報ではなく、公示情報だからです。
債権者などの第三者であっても、登記簿謄本を取得することができます。
登記簿謄本を確認すれば、信託したことは判明します。
債権者は登記簿謄本を取得するだけで、信託の存在を知ることができます。
(2)家族や親族から情報漏洩
家族信託は、家族間で財産の管理処分を依頼する契約です。
家族間の秘密にすれば、債権者に知られないと感じるかもしれません。
家族間でトラブルがあると、信託の存在が債権者に伝わります。
相続人間に不満があると、家族や親族から情報漏洩が起きます。
人間関係の中で、秘密は成立しません。
詐害行為取消訴訟の多くは、家族や親族からの情報提供で始まります。
(3)裁判所からの文書提出命令に強制力がある
債権者が金融機関に信託口口座の有無を照会しても、個人情報を盾に回答しません。
債権者は、裁判所に対して文書提出命令の申立てをすることができます。
家族や親族からの情報を疎明して、文書提出命令の申立てをすることができます。
裁判所による文書提出命令によって、文書の提出義務が課されます。
裁判所からの文書提出命令には、強制力があります。
金融機関は、裁判所の文書提出命令に従います。
提出する文書によって、次の点が明らかになるでしょう。
・信託契約書
・信託口口座の開設記録
・委託者から受託者への資金移動の記録
・信託口口座の取引履歴
家族信託を悪用すると、必ず露見します。
⑤遺留分逃れで家族信託を悪用することはできない
遺留分とは、相続人に認められた最低限の権利です。
相続財産に対する一定の割合の財産が最低限の権利として認められています。
配分された財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
家族信託をすると、信託財産は相続財産でなくなります。
家族信託を悪用して、遺留分侵害額請求を回避することは許されません。
遺留分侵害額請求を回避する目的の家族信託は、公序良俗に反するからです。
3家族信託を司法書士に依頼するメリット
家族信託は、信託契約によって柔軟に設計することができます。
今までの遺言書や後見などでできないことも実現することができます。
柔軟で自由に設計できるからこそ、契約内容や手続きは難しく専門家のサポートが欠かせません。
委託者の固有の財産から切り離して、だれの財産でもない独立した財産にできることも大きな魅力でしょう。
一方で、このような魅力を悪用することを考える人がいるかもしれません。
借金から逃れるために信託を利用するなどは、典型例でしょう。
このようなことをすると大きなトラブルになってしまいます。
これ以外にも、委託者の固有の財産から切り離して、だれの財産でもない独立した財産にできることから、遺留分を侵害する恐れもあります。
遺留分侵害額請求から逃れるために信託を悪用する事例もあります。
委託者、受託者、受益者の関係者がすべて家族で完結するから安心と言えますが、全員に知識がないことが多くトラブルに発展しやすいと言えます。
家族全員が家族信託について話し合い、充分知識をつけて、何でも相談できるのであれば、円滑に運用することができるでしょう。
充分な知識がないのに、信託を設定するとトラブルが起きると言えます。
受託者監督人など家族以外の専門家のサポートを受ける方が安心できる場合もあります。
家族信託は、公正証書で契約しなくても有効になります。
公正証書は公証人という専門家の目も通るし、契約内容についてのトラブルを防ぐこともできます。
やはり専門家のサポートが欠かせないというべきでしょう。
家族信託を考えている方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続や遺産承継の手続きは、専門家選びが重要です。
「オリーブの木司法書士事務所」では、司法書士の宮木由加が最初から最後まで一貫して対応することで、お客様一人ひとりに最適なサポートを提供します。
相続放棄や不動産登記はもちろん、近年注目される家族信託など、多岐にわたる相続関連業務に幅広く対応。
提携する税理士や弁護士との連携により、多角的な視点から複雑な案件もスムーズに解決へと導きます。
愛知・岐阜県にお住まいの方や、全国の不動産に関するご相談も承っております。
お仕事帰りに立ち寄りやすい上前津駅から徒歩2分という立地も、当事務所の強みです。
「面倒な手続きをプロに任せたい」「最適な方法を知りたい」という方は、ぜひ「オリーブの木司法書士事務所」の無料相談をご利用ください。
