おひとりさまに相続人がいないときの財産の行方

1おひとりさまで相続人がいない

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②おひとりさま死亡で相続人不存在

相続人になる人は、法律で決まっています。

被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹がいない一人っ子は、相続人がいません。

いとこなどと、親戚付き合いをしているかもしれません。

いとこは、相続人になれません。

おひとりさまが死亡すると、相続人不存在になります。

③相続人不存在が社会に与える影響

(1)所有者不明土地の増加

相続人がいない不動産は、相続登記がされないまま放置されます。

所有者が分からない土地が増加しています。

土地を売ってもらいたい場合、だれにお願いすればいいか分からなくなります。

公共事業で土地を売ってもらいたい場合、公共事業ができなくなるでしょう。

地域発展の妨げになっています。

相続人不存在で、所有者不明土地が増加しています。

(2)治安や景観の悪化

相続人がいない不動産は、管理がされないまま放置されます。

土地や建物の老朽化が進み、倒壊のリスクが大きくなるでしょう。

雑草が生い茂ると、病害虫のリスクがあります。

管理がされないまま放置されると、ゴミの不法投棄や犯罪の温床になる可能性があります。

相続人不存在で、治安や景観が悪化します。

(3)行政の負担増加

不動産が管理がされないまま放置されると、周囲にさまざまなリスクが発生します。

周辺住民のため、行政が管理せざるを得なくなります。

行政コストや人手の負担が無視でなくなっています。

相続人不存在で、行政の負担が増加しています。

(4)マンションの資産価値低下

相続人がいない不動産は、管理費や修繕積立金が納入されないまま放置されます。

マンション全体の資産価値が低下するおそれがあります。

相続人不存在で、マンションの資産価値低下します。

④おひとりさまが増加している理由

理由(1)生涯未婚率の上昇

生涯結婚しない人が増加しています。

配偶者や子どもがいないまま、高齢者になります。

理由1つ目は、生涯未婚率の上昇です。

理由(2)少子高齢化の進行

子どもが少なくなり、親族とのつながりが希薄になっています。

理由2つ目は、少子高齢化の進行です。

理由(3)親族とのつながりが希薄

さまざまな家族の事情から、長期間連絡を取っていないことがあります。

相続人が存在しても、疎遠になっていることがあります。

被相続人と疎遠になっていると、相続に関わりたくないと考えるかもしれません。

相続人が存在しても、相続放棄をすると相続人でなくなります。

理由3つ目は、親族とのつながりが希薄になったことです。

2おひとりさまに相続人がいないときの財産の行方

①相続人がいないと国庫帰属

相続人になる人は、法律で決まっています。

天涯孤独の人には、相続人がまったくいません。

相続人はいるけど、相続放棄をすることがあります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

相続人が不存在の場合、相続財産は国庫に帰属します。

②相続人不存在のときだけ特別縁故者財産分与の申立て

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人不存在の場合、相続財産は国庫に帰属するのが原則です。

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

相続財産を国庫に帰属させるより、特別な関係にあった人に分与した方が適切なことがあります。

家庭裁判所に特別縁故者と認められれば、相続財産が分与されます。

相続人不存在の場合だけ、特別縁故者財産分与の申立てをすることができます。

③特別縁故者は家庭裁判所の判断

特別縁故者に認められた場合、相続財産の分与を受けることができます。

特別縁故者に認められる人は、次のとおりです。

(1)生計を同じくしていた人

(2)被相続人の療養看護につとめた人

(3)その他被相続人と特別な関係にあった人

特別縁故者に認められるか、家庭裁判所が判断します。

家庭裁判所は、客観的な証拠を基に判断するからです。

例えば、客観的な証拠には次のものがあります。

・長期間の生計同一が分かる住民票

・生活費を渡していた銀行の振込記録

・療養看護に関する領収書や看護記録

・被相続人のやり取りが分かる手紙、メール

主観的に特別縁故者であると思っても、証拠がないと家庭裁判所は認めてくれないでしょう。

申立てには、客観的資料を準備する手間がかかります。

自分で準備できなければ、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することになるでしょう。

別途、専門家に対して報酬を払う必要があります。

特別縁故者に認められるのは、想像以上に高いハードルがあります。

特別縁故者は、家庭裁判所が判断します。

④相続人がいると特別縁故者に認められない

特別縁故者が認められるのは、相続人が不存在のときだけです。

相続人になる人は、法律で決められています。

家族のさまざまな事情から、被相続人と疎遠になっている家族がいることがあります。

音信不通であっても行方不明であっても、法律で決められた人は相続人になります。

相続人がいるのに、特別縁故者が認められることはありません。

⑤国庫帰属までの流れ

手順(1)相続人不存在の確認

被相続人が死亡した後、相続人調査をします。

相続人がまったくいない場合、相続人不存在になります。

相続人がいても、家庭裁判所で相続放棄をすることがあります。

相続放棄が認められると、はじめから相続人でなくなります。

相続人不存在の確認には、1か月以上かかることが多いでしょう。

手順1つ目は、相続人不存在の確認です。

手順(2)相続財産清算人の選任申立て

相続財産清算人とは、相続財産を清算して国庫に帰属させる人です。

相続人が不存在の場合、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらいます。

相続財産清算人の選任申立てには、たくさんの戸籍謄本を準備する必要があります。

戸籍謄本を取得するため、市区町村役場に払う手数料は合計すると1万円以上かかるでしょう。

相続財産清算人選任の申立てには、申立費用800円、官報掲載費用5075円が必要です。

家庭裁判所の指示で、予納金を納めます。

予納金は清算する財産の状況によって違いますが、100万円程度かかることがあります。

相続財産清算人の選任申立てから選任されるまで、1~2か月程度かかります。

手順2つ目は、相続財産清算人の選任申立てです。

手順(3)相続財産清算人の選任と相続人および債権者捜索の公告

相続財産清算人が選任されると、家庭裁判所が官報公告を出します。

家庭裁判所が出す官報公告の内容は、次のとおりです。

・相続財産清算人が選任されたこと

・相続人を捜索していること

家庭裁判所が出す官報公告の期間は、6か月です。

相続人が見つかったら、相続財産は相続人に引き継がれます。

家庭裁判所の公告と並行して、相続財産清算人も官報公告を出します。

相続財産清算人が出す官報公告の内容は、次のとおりです。

・債権者や受遺者は請求して欲しいこと

相続財産清算人が出す官報公告の期間は、2か月です。

債権者や受遺者が見つかったら、債権者→受遺者の順で弁済します。

手順3つ目は、相続財産清算人の選任と相続人および債権者捜索の公告です。

手順(4)相続人不存在確定

家庭裁判所と相続財産清算人が出す官報公告の期間が満了すると、相続人不存在が確定します。

相続財産に不動産がある場合、亡〇〇〇〇相続財産に名称を変更します。

手順4つ目は、相続人不存在確定です。

手順(5)特別縁故者に対する相続財産分与の申立て

相続人不存在が確定した後、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをすることができます。

申立てができるのは、相続人不存在が確定してから3か月以内です。

家庭裁判所に特別縁故者と認められたら、相続財産が全部または一部が分与されます。

手順5つ目は、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てです。

手順(6)国庫帰属

特別縁故者に対する相続財産分与をしても、残った財産は国庫に帰属します。

原則として、相続財産は換価して国庫に帰属します。

相続財産清算人の選任申立てから国庫帰属まで、1年程度かかります。

手順6つ目は、国庫帰属です。

3おひとりさまは遺言書作成が重要

①何もせずに国庫帰属するわけではない

相続人がいない場合、相続財産は国庫に帰属します。

相続財産は、自動で国庫に帰属するわけではありません。

相続財産清算人を選任してもらって、相続財産清算人による手続を経て国庫に帰属します。

②遺言書なしで遺贈はできない

国庫に帰属するより、お世話になった人に財産を引き継ぎたいことがあるでしょう。

ボランティア団体や慈善団体に対して、財産を遺贈することができます。

遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。

遺言書なしで、遺贈はできません。

③特別縁故者に期待するより遺贈がおすすめ

家庭裁判所に特別縁故者と認めらたら、相続財産が分与されます。

特別縁故者に期待するのは、おすすめできません。

特別縁故者は、家庭裁判所の判断だからです。

特別縁故者に該当しても、客観的証拠がないと家庭裁判所は認めてくれません。

特別縁故者であるか、被相続人が一番分かっているでしょう。

被相続人が遺言書を作成して、遺贈するのがおすすめです。

④財産を換価して遺贈ができる

不動産をそのまま遺贈する場合、ボランティア団体や慈善団体などは遺贈を放棄することがほとんどです。

不動産は、管理の手間がかかるからです。

遺言者の気持ちを生かすため、事前に相談することが重要です。

不動産をそのままでなく、換金して遺贈することがおすすめです。

⑤遺言執行者を選任して相続手続はおまかせ

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書を作成する場合、遺言執行者を指名することができます。

遺言執行者がいると、相続手続はおまかせすることができます。

⑥公正証書遺言がおすすめ

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言とは、自分で書いて作る遺言書です。

ひとりで作ることができるから、手軽です。

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

証人2人に確認してもらって、作成します。

遺言書を作成する場合、公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言のメリットは、次のとおりです。

メリット(1)安心確実

メリット(2)偽造変造トラブルの防止

メリット(3) 検認手続が不要

メリット(4)遺言者の負担が少ない

メリット(5)検索システムで探しやすい

公正証書遺言は費用と手間がかかるけど、相続トラブル防止の観点からおすすめです。

公正証書遺言は公証人が関与するから、信頼性が高いからです。

⑦生前に対策すれば自分の意思を実現できる

相続人がいれば、相続財産は相続人が相続します。

相続人がいないと、相続財産は国庫に帰属します。

自分の財産をどのように生かすか、財産の持ち主だけが決めることができます。

自分が生きているうちに、財産を贈与することが選択肢になるでしょう。

自分が死亡した後で、財産を遺贈することが選択肢になるでしょう。

遺言書を作成するなど、生前対策をすることが重要です。

生前に対策すれば、自分の意思を実現できるからです。

4遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

相続手続はタイヘンですが、相続人がいない場合はもっとタイヘンです。

おひとりさまには、相続人がいません。

財産は国に持っていかれて、何もしなくていいと軽く考えがちです。

被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。

財産の内容によっては、100万円以上の費用の負担があることも見逃せません。

国に持っていかれるよりは、お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという気持ちがある人もいるでしょう。

自分の意思は、遺言書で実現できます。

特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをしても、必ずしも認められるとは限りません。

認められても、財産の一部のみの場合もあります。

家庭裁判所に対する手続ですから、一般の人には高いハードルです。

遺言書に、遺贈することを書き、遺言執行者を決めておけば、手間はかかりません。

適切な遺言書作成と遺言執行は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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