現金を相続するときの注意点

1現金は相続財産

①現金は遺産分割の対象

相続が発生したら、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

被相続人が手元に現金を残したまま死亡した場合、現金は相続財産です。

相続人全員の共有財産になるから、一部の相続人が勝手に取得することはできません。

現金は、遺産分割の対象です。

②相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

現金は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

不動産や預貯金などと同様に、現金の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。

③遺産分割協議書は相続人全員の合意の証明

相続財産の分け方を決めるための相続人全員の話し合いを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議で相続財産の分け方について合意ができた場合、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

相続人全員に内容を確認してもらって記名し実印で押印してもらいます。

遺産分割協議書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

相続人全員の記名押印は、遺産分割協議書に間違いがないことの証明です。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容の証明書です。

遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書で、相続人全員の合意内容を客観的に証明することができます。

④現金を黙っていると使い込みトラブル

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

一部の相続人が勝手に取得することはできません。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があるからです。

自宅などに現金が保管されていた場合、相続人で情報共有することが大切です。

他の相続人に何も言わないと、使い込みトラブルになるおそれがあります。

現金は、存在や金額が客観的に分かりにくいと言えます。

預貯金は、入出金履歴を金融機関に照会することができます。

現金の存在を他の相続人が知らなかったら、遺産分割の対象から外すことができてしまいます。

もちろん、相続財産は相続人全員の共有財産です。

現金を隠したり勝手に取得する行為は、刑法上の横領や窃盗になるおそれがあります。

使い込みをしていなくても、相続人が疑心暗鬼になるとトラブルになります。

被相続人の現金を見つけた場合、相続人間で情報共有することが重要です。

2現金を相続するメリット

①現金の相続は名義変更が不要

現金の相続では、名義変更手続は不要です。

銀行などの預貯金は、現金ではありません。

預貯金の相続では、相続手続が必要です。

銀行などの預貯金は、銀行から預貯金を引き出す権利だからです。

銀行から預貯金を引き出す権利をだれが相続するのか、相続人全員で合意する必要があります。

現金を相続する場合も、現金をだれが相続するのか相続人全員で合意する必要があります。

現金であっても銀行の預貯金であっても、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。

相続人全員の合意ができれば、すぐに現金を取得することができます。

相続人全員の合意ができるまで、一部の相続人が勝手に使うことはできません。

現金は名義変更手続が不要である点がメリットです。

②現金はすぐに使うことができる

現金の相続では、名義変更手続は不要です。

遺産分割協議ができれば、すぐに取得することができます。

例えば、不動産を相続した場合、相続登記をする必要があります。

売却してお金で分けたいと合意しても、思うようにいかないことが多いでしょう。

相続人全員が納得するような値が付かないことがあります。

売却することに納得できても、時期がよくないと考えるかもしれません。

現金はすぐに使うことができる点がメリットです。

③公平に分けやすい

相続財産には、いろいろな種類の財産があることが通常です。

現金や預貯金は、分けやすい財産です。

不動産は、分けにくい財産の代表です。

相続財産の大部分が不動産であることがあります。

相続財産の分け方について、相続人全員の合意は難航しがちです。

不動産は、分けにくい財産だからです。

相続財産の分け方は、次の方法があります。

(1)現物分割

(2)換価分割

(3)代償分割

(4)共有

(5)用益権設定による分割

どの方法にも、メリットデメリットがあります。

不動産は、公平に分けることが難しいものです。

現金や預貯金は、1円単位まで簡単に分けることができます。

現金は公平に分けることができる点がメリットです。

④遺留分侵害額請求などに対応しやすい

被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。

財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。

家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。

被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。

今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。

被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。

相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。

分配を受けた財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分を侵害した人は、遺留分侵害額請求を拒否することはできません。

遺留分侵害額請求は、遺留分に相当する金銭を請求します。

原則として、すぐに現金で支払いをしなければなりません。

現金を相続した場合、遺留分侵害額請求に対応しやすいでしょう。

現金は遺留分侵害額請求などに対応しやすい点がメリットです。

3現金を相続したときの相続税

①相続税がかかるのは基礎控除額を超えたとき

資産家や有名人が死亡した後に、多額の相続税を納付した話を聞くことがあります。

高額な相続税を想像して、不安になるかもしれません。

相続税がかかるのは、相続財産が基礎控除額を超えたときのみです。

基礎控除額は、次の計算式で求められます。

基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の人数

相続財産が基礎控除額に収まっていれば、相続税はかかりません。

相続税の申告をしなければならない人は、実際のところ10%にも満たないわずかな人です。

相続税の申告が必要なだけで、納税は必要ない人もたくさんいます。

相続税がかかるのは、基礎控除額を超えたときのみです。

②配偶者には相続税がほとんどかからない

相続税には、配偶者控除があります。

相続税の配偶者控除は、次のうちいずれか大きい方です。

・1億6000万円

・法定相続分

相続人が配偶者のみである場合、配偶者はすべての財産を相続します。

すべての財産が配偶者控除の対象です。

配偶者は、手厚く保護されています。

配偶者控除を適用すると、配偶者が相続税を納めることは稀です。

配偶者には、相続税がほとんどかかりません。

③現金は相続税対策がしにくい

相続税の対象額は、対象となる相続財産を評価して計算します。

現金を相続する場合、額面そのままの評価額です。

不動産を相続する場合、購入額より低い評価額になることが多いでしょう。

土地の相続税評価額は、時価の80%程度が多いです。

建物の相続税評価額は、時価の70%程度が多いです。

不動産には、相続税を少なくする特例や控除が複数設けられています。

不動産を相続する場合、相続税対策がしやすいと言えます。

現金には、相続税を少なくする特例や控除がありません。

現金を相続する場合、相続税対策がしにくいと言えます。

④自宅で現金が見つかったら

遺品整理をしていると、金庫や家具などから手許現金が見つかることがあります。

被相続人の現金であれば、相続財産です。

相続税の申告が必要な財産規模である場合、手許現金は申告する必要があります。

手許現金は、有無が分かりにくい財産です。

相続税申告をした後に、多額の現金が見つかることがあります。

申告すべき財産を見つけた場合、すぐに修正申告をする必要があります。

自主的に修正申告をした場合、加算税が免除されます。

税務調査などで指摘された後に修正申告をする場合、延滞税や過少申告加算税が課されます。

意図的な財産隠しと認められる場合、さらに重加算税が課されます。

自宅で現金が見つかったら、ただちに修正申告が必要です。

4遺産分割協議証明書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

話し合いによる合意を適切に文書にする必要があります。

書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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