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1不動産の名義変更とは
被相続人が生前所有していたものは相続財産になりますから、原則として、相続人全員の共有財産になります。
相続財産は相続人全員で話し合いによる合意をして、分け方を決めることになります。
相続人全員による話し合いによる合意で、不動産を相続する人が決まったら、不動産の名義を書き換えます。
この不動産の名義の書換のことを相続登記といいます。
相続登記をするには費用と手間がかかります。
すぐに不動産を売却するのでなければ、目に見える不利益に気付きにくいため先延ばししがちです。
先延ばしすればするほど、デメリットは大きくなります。
相続手続は早めに済ませましょう。
相続登記を先延ばしすると、デメリットが大きくメリットはほとんどありません。
2相続登記を放置すると遺産分割協議が難しくなる
①相続人が死亡してしまう
相続登記をしないまま放置すると、相続人が死亡してしまうかもしれません。
すぐに相続登記をすれば、気ごころの知れた兄弟で話し合いをすれば済んだのに、放置したことで兄弟の配偶者や兄弟の子どもと話し合いをしなければならなくなります。
疎遠の相続人がいると、話し合いは一挙に難しくなります。
相続財産の分け方は相続人全員の話し合いによる合意が不可欠だからです。
疎遠だから、行方不明だから、連絡を取れないからなどは、理由になりません。
相続人全員の住所や連絡先を調べて話し合いによる合意が必要です。
気ごころの知れた兄弟で合意していたことでも、遺産分割協議書に取りまとめていない場合、兄弟の配偶者や兄弟の子どもは何も知らないことが多いでしょう。
そうなると話し合いによる合意はやり直しになります。
②相続人が認知症などで判断ができなくなる
相続財産の分け方は相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。
相続が発生したときは元気だったとしても、長期間放置しているうちに高齢になります。
相続人が高齢になると、認知症などを発症するリスクが高くなります。
認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。
物事のメリットデメリットを充分に判断することができない状態では、相続財産の分け方の合意はできません。
認知症など自分で判断することができなくなった人のために、サポートする人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。
サポートする人を後見人と言います。
後見人が本人の代わりに、相続財産の分け方の合意をします。
後見人は本人の利益のために働きますから、本人の法定相続分を主張します。
家族の事情を考慮した柔軟な話し合いは難しくなります。
相続登記のために後見人を選んでもらったとしても、相続手続完了後、やめることはできません。
③相続人が行方不明などで連絡が取れなくなる
相続財産の分け方は相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。
行方不明だから、連絡を取れないからなどは、話し合いから除外していい理由になりません。
行方不明の人がいる場合、代わりに話し合いをする人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。
代わりに話し合いをする人を不在者財産管理人と言います。
不在者財産管理人が本人の代わりに、相続財産の分け方の合意をします。
不在者財産管理人が相続財産の分け方の合意をする場合、家庭裁判所の許可が必要です。
家庭裁判所は、本人の法定相続分が確保されていないと許可しません。
家族の事情を考慮した柔軟な話し合いは難しくなります。
④相続人の気持ちが変わる
相続登記をしないまま放置すると、相続人の気持ちが変わるかもしれません。
せっかく相続財産の分け方について話し合いによる合意をしていても、長い期間の経過するうちに気持ちが変わることもあります。
周りの人からいろいろ聞いて気持ちが変わる人もいるし、経済状況が変わって考えを変える人もいます。
相続登記を放置している間に、相続人の間で別のトラブルが起きて話し合いができなくなることもあります。
3相続登記を放置すると不動産活用ができなくなる
不動産そのままでは相続人間で分けようがない場合や遠方で住む予定がない実家を相続した場合など、相続したもののすぐに不動産を売却したい場合もあるでしょう。
このような場合にも、相続登記は必要です。
所有権は、被相続人→相続人→買主と移動しているからです。
①売却などができない
相続登記をしていないと、通常、売却ができません。
賃貸として貸し出す場合も、不動産を担保として差し出す場合も、相続登記は必要です。
相続登記をしていない場合、自分で使う以外活用できません。
②建物の取壊し後、土地を売却できない
建物の取壊しをするにも、相続人全員の合意が必要になります。
建物の取壊しだけなら、相続登記は不要です。
相続人全員の合意があれば、建物滅失登記をすることができます。
建物取壊し後、土地を売却する場合、土地は相続登記が必要です。
③特定の相続人が自分の持分を売ってしまう
法定相続分で登記するのであれば、相続人は単独で登記ができます。
他の相続人が何も知らないところで、相続人全員の法定相続分で、相続登記ができてしまうのです。
法定相続分で相続登記をした後、不動産の持分を売却することができます。
あまり知られていませんが、持分を買い取る専門の業者もいます。
買い取り価格はおおむね時価の1~3割です。
経済的に困った相続人がいる場合、このような買取業者と不動産を共有することになります。
このような業者はビジネスですから、買い取った後、共有物分割請求などの権利主張をします。
④借金のある相続人の持分が差し押さえられる
債権者は債権の保全のため、債務者の財産を差し押さえることができます。
差押など強制執行の準備のため、相続登記を申請することができます。
差押などの強制執行をするためには、相続人名義である必要があるからです。
差押の後は、競売をして債権を回収します。
債権者は債務者の事情などお構いなしで登記しますから、相続人全員の話し合いによる合意がどうなったのか待つことはありません。
たとえ、相続人全員の話し合いで特定の相続人が相続することが合意されていても、登記されていなければ債権者は勝手に相続登記ができます。
相続登記をしていなければ、相続人全員の合意内容と違うから消して欲しいなどの文句を言えません。
4相続登記を放置すると手続費用が高くなる
相続登記には書類がたくさん必要になります。
役所から取り寄せる、戸籍や住民票などです。
長期間、相続登記を放置したことで相続人が死亡した場合、死亡した相続人の相続人を確定させる必要があります。
死亡した相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本が追加で必要になります。
単純に、集める戸籍謄本が増えるし、複雑になります。
また、戸籍や住民票は永年保管ではありません。
役所は書類の保存期間を決めていて、古い書類から順に廃棄します。
必要な書類が廃棄されていると取得できなくなってしまうおそれがあります。
取得できなくなったからと言って、相続登記ができなくなるということはありませんが、その代わりの書類を用意するのに余計な手間がかかります。
5相続登記を放置すると固定資産税は相続人全員の連帯債務
不動産があれば、原則として、固定資産税を納めなければなりません。
相続登記をしていなくても、固定資産税の納税義務は逃れられません。
相続財産である不動産の分け方の合意ができていなくても、役所は待っていてくれません。
被相続人が納めるべきであった固定資産税は、相続人全員に相続されます。
相続発生後、遺産分割終了までは相続人全員の連帯債務になります。
現実には、だれがどのように負担するかは相続人全員で話し合いによる合意をします。
代表相続人が他の相続人から集金して役所に納める場合、事務負担は想像以上に重いものです。
相続財産から固定資産税を納める場合、領収書などを紛失すると使い込みを疑われてトラブルになります。
固定資産税をだれが負担するかでトラブルになることも少なくありません。
遺産分割協議終了までの固定資産税は相続人全員の連帯債務ですから、遺産分割協議が長引くと連帯債務になる固定資産税がかさみます。
連帯債務になる固定資産税が高額になると、ますます合意がまとまらなくなります。
6不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
相続手続きは一生のうち何度も経験するものではないため、誰にとっても不慣れで手際よくできるものではありません。
相続手続きで使われる言葉は、法律用語なので一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続きは一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。
日常のお仕事や家事をこなしたうえに、これらのことがあると、疲労困憊になってしまうことも多いです。
司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続きであっても、多くの方はへとへとになってしまうものです。
相続手続きに疲れてイライラすると普段は温厚な人でも、トラブルを引き起こしかねません。
司法書士などの専門家はこのような方をサポートします。
相続手続でへとへとになったから先延ばしするより、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。