生前対策の種類

1 生前対策の種類

本人が高齢になると物事のメリットデメリットを適切に判断できなくなることが多くなります。

判断が適切にできなくなったり、ひとりで決めることが心配になると、本人はもとより家族も困ることがでてきます。

生前対策とは、本人や家族が困ることがないように、本人が元気なうちから準備をすることです。

生前対策というと、相続「税」だけに着目した対策と思われがちです。

相続税申告が必要な方が大幅増加とか相続税大増税とか不安を煽る宣伝を見たことも多いでしょう。

確かに、平成27年に税制改正がありました。

相続税申告が必要な方は、税制改正前は5%未満のわずかな人でしたが、改正後10%未満のわずかな人になったに過ぎません。

しかも、相続税申告が必要な方というのは、申告のみ必要なだけで納めるべき税金がない方もたくさん含まれています。

こういった方を含めても10%未満の人の話です。

だから、生前対策や相続対策はお金持ちがすること、庶民は関係ないと誤解されてしまっています。

実際、家族で話題に出すと「うちは資産家でないから」「対策するほどお金はない」と言われてしまって話ができないという方はたくさんいます。

生前対策=相続「税」対策ではありません。

生前対策は、本人や家族が困らないように、本人の判断能力がしっかりしているうちに準備をすることです。

具体的には

  1. 認知症対策
  2. 争族対策
  3. 相続税対策

です。

3つのうち圧倒的に重要なのは①認知症対策です。

次に重要なのは②争族対策でしょう。

①認知症対策②争族対策をしたうえで、余力があり、かつ、10%に該当する方は③相続税対策に取り組むといいでしょう。

2 ①認知症対策が最重要

高齢化社会が到来して、多くの方は長生きになりました。

長生きになった分、認知症になるリスクは高まったと言えるでしょう。

80歳以上の場合、およそ2人に1人が認知症になるとも言われています。

認知症になると、物事のメリットデメリットを適切に判断できなくなったり、ひとりで決めることが不安になったりします。

財産を適切に管理したり処分したりすることができなくなりますから、事実上財産が凍結されます。

つまり、自宅などの不動産を売却したり、預貯金を引き出したり、定期預金を解約することなどは、本人が認知症になるとできなくなります。

親が判断できなくなったからと言っても、子どもが代わりに自宅を売却することはできません。

「認知症になったら、自宅を売って老人ホームへ入れてね」は事前に準備をしないと実現できないのです。

そうなると、介護施設の入居費用や月々の介護費用は、家族が代わりに負担することになるでしょう。

3 家族のトラブルを減らす②争族対策

相続が発生したら相続人は日常の仕事や家事に加えて、多くの用事や手続で忙殺されます。

大切な家族を失った悲しみの中でしなければならないうえに、相続手続は一生に何度も経験するものでないから、誰にとっても不慣れでスムーズに進みません。

相続が発生すると、相続財産は相続人全員の共有になります。

相続財産は分け方について相続人全員で話し合いによる合意をしてからでなければ処分できません。

相続財産の分け方について、あらかじめ意見のすり合わせがあれば、話し合いによる合意は比較的容易です。

話し合いの場ではじめて他の相続人が違う意見だったことを知るとなると、意見と感情のぶつけ合いに発展しがちです。

相続人は大きな悲しみの中で慣れない手続をして、疲れ果てているから、普段温厚な人でもイライラしてまとまる話もまとまらないことが多くなります。

このような争族のタネは対策することで減らすことができます。

対策することで子どもに面倒をかけずに済みます。

「子どもに面倒をかけたくない」を実現するには事前準備が重要です。

事前に対策することで、争族のタネを減らすことができるだけではありません。

事前に対策することで相続手続が格段にラクになります。

自分がいなくなった後、家族が笑顔になる、家族が感謝していることをイメージしてみましょう。

家族の笑顔のために、争族対策が必要なのです。

4 生前対策で重要なこと

① 自分の希望をはっきりさせること

自分はどうしたいのか明確にしましょう。

自分らしく生きるためにサポートすることはできますが、どう生きたいのかはっきりさせないと家族でトラブルを起こします。

不動産などの重要財産は、特に家族みんなで意見共有するが重要です。

② 選択肢を比較検討すること

本人が自分らしく生きるにあたって選択肢はいくつか考えられることがあります。

本人も家族も選択肢のメリットデメリットをしっかり理解して選択するのが理想です。

③ 元気なうちに準備すること

生前対策は本人の判断能力がしっかりしていることが前提です。

残念ながら認知症になってしまってから困って相談する方が後を絶ちません。

選択肢のメリットデメリットを判断するにもお元気なうちしかできません。

認知症になってしまったらほとんど対策ができなくなります。

5 生前対策を司法書士に依頼するメリット

生前対策=相続「税」対策の誤解から、生前対策はする方はあまり多くありません。

争族対策として有効な遺言書ですら、死亡者全体からみると10%未満です。

対策しないまま認知症になると、家族に大きな面倒をかけることになります。

認知症になってからでは遅いのです。

お元気なうちに準備する必要があります。

なにより自分が困らないために、大切な家族に面倒をかけないために生前対策をしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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