ペット信託

1ペットは相続できない

高齢化社会が到来して、多くの方は長生きになりました。

核家族化が進み、高齢者世帯や単身世帯が増えています。

人生100年時代のさびしさや孤独の辛さから、ペットに癒しを求めている人が増えています。

ペットは「家族」として一緒に暮らすパートナーになったと言えるでしょう。

飼主にとって、大切な家族であるペットですが、飼主が死亡しても、相続人にはなれません。

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

誰が相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの
 尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

飼主にとって、ペットは大切な家族ですが、法律上は物と同じです。

法律上、物に財産を残すことはできません。

ペットは相続人になれません。

2ペットの飼育をお願いする方法

飼主にとって大切な家族であるペットは、飼主を失うと人間以上に困ります。

ペットは自分では何もできないからです。

ペットの飼育が心配で、ペットを残して逝けないと言う方もいます。

①負担付遺贈

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

譲ってあげる相手は、相続人以外の人でも構いませんから、ペットの飼育を引き受けてくれる人にも譲ってあげることができます。

ペットを飼育してもらうことを条件にして、遺言によって、財産を譲ってあげることができます。

遺贈は、遺言によって行います。

遺言書は相続人などの関与なしで作ることができます。

遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。

遺言に書いてあるからとは言っても、受け取る人が困ることがあります。

受け取る人がペットにアレルギーがあるかもしれません。

ペット飼育禁止のマンションに住んでいるかもしれません。

遺贈は、放棄することができます。

飼主にとって大切な家族だから、飼育をお願いしたいのに放棄されてしまうのは困るでしょう。

財産を受け取る人が遺贈を放棄しない場合でも、適切に飼育しないかもしれません。

財産を受け取った人が適切に飼育をしていない場合、相続人や遺言執行者は家庭裁判所に負担付遺贈に関する遺言の取消を求めることができます。

家庭裁判所に対して遺言の取消を求めるのは、手続が煩雑です。

②負担付死因贈与

死因贈与とは、財産を譲ってあげる人が死亡したら、財産を譲る契約です。

契約なので、財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人が合意する必要があります。

遺贈のように、受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができません。

財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人が合意して決めたことだから、後になって、お断りをすることはできません。

飼主にとって大切な家族を、お断りされることなく飼育してもらえることは、安心できるでしょう。

負担付遺贈も、負担付死因贈与も、財産を受け取った後、受け取った財産は受け取った人のものです。

ペットを適切に飼育しているか、第三者がチェックする仕組みがありません。

受け取った財産で、ペットの飼育以外に浪費をすることもできます。

ペットの飼育が終了した後も、譲ってあげた財産は、受け取った人のものです。

3ペット信託

信託とは、信頼できる人に財産を預かってもらって、自分の決めた人のために利用管理してもらう契約のことです。

信託の仕組みをペットに応用したのが、ペット信託です。

信託財産を管理するための、管理会社を設立しなければならないと称して、高額な報酬を要求する自称専門家がいます。

ペット信託であれば、ほとんどの場合そのようなことは不要でしょう。

あらかじめ、ペット信託をしておくことで、飼主がペットの世話をすることができなくなっても、ペットの飼育をしてもらうことができます。

飼主が死亡したときだけでなく、飼主が入院したり、施設に入所したりして飼育できなくなるときから、飼育をしてもらうことができます。

信託契約をしておくと、信頼できる人に財産を預かってもらうことになります。

相続が発生した場合、相続財産とは別の財産として分離して管理することになります。

相続争いに巻き込まれて、ペットの飼育費が出せなくなるといったトラブルを防ぐことができます。

信託契約では、信託管理人を置くことができます。

信託財産が契約どおりに適切に管理されているか監視や監督をしてもらうことができます。

預けた財産はペットの飼育のためだけに使うと決めておけば、他の用途に浪費することはできません。

信託管理人は、他の用途に浪費されていることを見つけたら、契約に合うように適切に管理するように改善させることができます。

ペット信託が終了したときに、残った財産は誰が受け継ぐか、飼主が決めておくことができます。

ペット信託に限らず、信託契約は信頼できる人と契約することが重要です。

4ペット信託の注意点

①信頼できる人と契約する

財産を預かってもらう人も、実際に飼育する人も、信託管理人も信頼できる人を選びましょう。

さらに、トラブル防止のために契約は公正証書でするといいでしょう。

②認知症になると契約できない

ペット信託は契約です。

契約は、判断能力がしっかりしているうちだけ、締結することができます。

飼主が認知症になると、契約ができなくなります。

先延ばしせずに、早めに契約することをおすすめします。

③遺留分に配慮する

遺留分とは、相続財産に対して、認められる最低限の権利のことです。

遺留分は配偶者、子ども、直系尊属に認められます。

兄弟姉妹は遺留分がありません。

信託契約による財産移転によって、相続人の遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求をされるおそれがあります。

信託契約をするときに、預かってもらう財産をいくらにするのか、遺留分について考えたうえで決めましょう。

5ペット信託を司法書士に依頼するメリット

自分が大切にしている家族の将来が気にならない人はいないでしょう。

自分が死亡した後も、幸せを願うのは当たり前のことです。

残念ながら、飼主がペットはいかに大切にしていようとも、法律上は物でしかありません。

信託の仕組みを上手に使えば、ペットの飼育のための財産を残すことができます。

信託した財産を使って、ペットは幸せな生涯を送ることができます。

飼主は、自分が飼育できなくなった後も、大切な家族に対する責任を果たすことができます。

ペットに問題を残さないように、ペット信託を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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