相続で上場株式の名義変更をする方法

1上場株式の特徴

①株価の急騰リスク急落リスクがある

被相続人が上場株式を保有していた場合、上場株式は相続人が相続します。

上場株式は、預貯金などと異なり日々価格が大きく変動します。

さまざまな経済事情から、株価が急騰したり急落したりします。

通常時でも、上下20%程度の価格変動が発生します。

例えば、リーマンショックなどの大きな経済変動のときは、20%以上の価格変動が発生します。

売却の時期や方法によっては、大きな差が出ることがあるでしょう。

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。

相続人全員が話し合いをしている間にも、大きな値動きがあるでしょう。

上場株式は、株価の急騰リスク急落リスクがあります。

②相続税評価額と換価ギャップがある

相続財産全体の規模が一定以上である場合、相続税の対象になります。

相続税の申告が必要である場合、株式の評価額は相続財産に含める必要があります。

上場株式は、株価の急騰リスク急落リスクがあります。

公平に評価をするために、次の評価方法が認められています。

・被相続人が死亡した日の終値

・被相続人が死亡した月の毎日の終値の平均

・被相続人が死亡した前月の毎日の終値の平均

・被相続人が死亡した前々月の毎日の終値の平均

上記のうち、最も有利な評価額を選択することができます。

相続発生後に売却したいと思っても、実際に売却できるのは長期間かかります。

遺産分割協議や相続手続に時間がかかるからです。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方を決めるための相続人全員による話し合いです。

相続人全員が話し合いをしている間にも、大きな値動きがあります。

株価が急落している場合、実際の売却金額が想像以上に少なくなるかもしれません。

評価額と換金額の違いを事前に理解していないと、がっかりします。

株価が急騰している場合、実際の売却金額が想像以上に多くなるかもしれません。

評価額と換金額の違いを事前に理解していないと、他の相続人が不満に思うでしょう。

上場株式は、相続税評価額と換価ギャップがあります。

③遺産分割が難しい

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

上場株式であっても、相続人全員の合意が必要です。

自動で法定相続分で各相続人が相続することはできません。

株式は、議決権や配当請求権があるからです。

議決権や配当請求権は不可分の権利と考えられているから、自動で各相続人に分割されません。

相続人全員による話し合いがまとまらないと、株式は相続人全員が準共有することになります。

準共有になると、各相続人が勝手に売却や議決権行使ができなくなります。

上場株式は、遺産分割が難しいことに注意が必要です。

④売却で譲渡所得税

上場株式を株式を売却すると、譲渡所得が発生することがあります。

相続した株式を売却したときも、同様に譲渡所得が発生することがあります。

譲渡所得に対して、所得税と住民税が課されます。

2相続で上場株式の名義変更をする方法

手順①証券会社を探す

被相続人が上場株式を保有している場合、証券会社に口座を持っているでしょう。

証券会社と取引があれば、通常、残高報告書が届いているはずです。

自宅などで保管されている書類を確認すると、取引がある証券会社が分かります。

銀行などの預貯金口座の取引履歴を確認すると、配当金などが入金されていることがあります。

取引がある証券会社が分からない場合、証券保管振替機構に照会することができます。

手順1つ目は、証券会社を探すことです。

手順②証券会社へ連絡

取引がある証券会社が判明したら、口座の持ち主を死亡したことを連絡します。

ひとまずコールセンターなどに、電話するといいでしょう。

証券会社によって、支店窓口に出向いて手続をするように案内されます。

口座の持ち主を死亡したことを連絡すると、口座が凍結されます。

口座凍結とは、口座取引を停止することです。

手順2つ目は、証券会社へ連絡です。

手順③遺産分割協議書の作成

上場株式の分け方を決めるため、相続人全員で話し合いをします。

話し合いがまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。

遺産分割協議書とは、相続人全員による合意内容の証明書です。

遺産分割協議書の内容に間違いがないか、相続人全員に確認してもらいます。

間違いがないことを確認したうえで、相続人全員が記名し実印で押印します。

実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

相続人が各地に住んでいると、遺産分割協議書の作成が難航しがちです。

郵送の手間などで手続に時間がかかると、トラブルに発展するおそれがあります。

相続人全員の合意ができたら、すみやかに協議書の作成をします。

手順3つ目は、遺産分割協議書の作成です。

手順④必要書類の準備

証券会社から、相続手続の案内がされます。

指定の手続用紙や必要書類のリストが届きます。

証券会社の案内に従って、必要書類を準備します。

遺言書がないときの代表的な必要書類は、次のとおりです。

・証券会社指定の株式名義書き換え請求書

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・相続人全員の現在戸籍

・遺産分割協議書

・相続人全員の印鑑証明書

必要書類や手続手順は証券会社によって若干異なります。

必要な書類が準備できないと、相続手続が進められなくなります。

手順4つ目は、必要書類の準備です。

手順⑤相続人名義の口座開設

被相続人の株式を引き継ぐため、相続する人は証券会社に口座を開設します。

口座開設には、本人確認書類やマイナンバーが分かる書類が必要です。

手順5つ目は、相続人名義の口座開設です。

手順⑥書類提出

必要書類が全部揃ったら、証券会社に提出します。

証券会社によっては、郵送提出のみであることがあります。

手順書に添って、書類を提出します。

手順6つ目は、書類提出です。

手順⑦移管手続完了

提出書類に問題がなければ、相続人の口座に移管されます。

相続人が売却できるのは、移管された後です。

書類を提出してから、移管手続が完了するまでに1か月程度かかります。

相続人の口座に移管されると、被相続人の口座は閉鎖されます。

複数の証券会社に口座がある場合、各証券会社に対して同様の手続をします。

手順7つ目は、移管手続完了です。

3遺産分割の方法と注意点

①現物分割でそのまま分ける

現物分割とは、上場株式をそのままの形で分ける方法です。

例えば、保有銘柄ごとに分ける方法や保有株式数を分割して分ける方法があります。

株式をそのまま保有すれば、将来の値上がりや配当を期待できます。

株式を相続した後は、自由に売却することができます。

保有銘柄ごとに、収益や値上がりが違います。

法定相続分どおりに分けられず、端株や単元未満株が発生することがあります。

株式を保有することに、不安を感じる相続人がいるでしょう。

注意点は、相続人が不公平を感じやすい点です。

②換価分割で売却して分ける

換価分割とは、上場株式を売却して現金で分ける方法です。

上場株式の売却のために、相続人全員の合意が必要です。

遺産分割協議をしている間も、株価は大きく変動します。

被相続人の名義のままでは、売却ができません。

すみやかに相続手続をする必要があります。

売却のタイミングによっては、想像以上に低額な金額にしかならないことがあります。

売却のタイミングなども、相続人間で充分に合意し遺産分割協議書に記載します。

売却した後は金銭で分配できるから、平等に分けやすいのがメリットです。

売却益が発生した場合、売却代金を受け取った相続人は確定申告を必要です。

遺産分割協議書の記載が適切でないと、贈与税の対象になるおそれがあります。

注意点は、遺産分割協議書の記載です。

③代償分割で代償金で調整する

代償分割とは、一部の相続人が上場株式を相続し他の相続人は代償金を受け取る方法です。

上場株式を相続する相続人に、代償金を支払う資力が必要です。

代償金を算定するために、相続する株式の評価額が重要になります。

相続税評価額は、最も低い金額を選択します。

高い評価額を選択すると、相続税が高くなるからです。

相続人が話し合いをしている間も、株価は大きく変動します。

上場株式の評価額によっては、相続人が不公平に感じるかもしれません。

注意点は、代償金の金額で合意が難航する点です。

④話し合いがまとまらないときは家庭裁判所の遺産分割調停

相続人だけで話し合いをしても、合意が難しいことがあります。

相続人だけで話し合いが難しい場合、家庭裁判所の助力を得ることができます。

遺産分割調停とは、家庭裁判所のアドバイスを受けてする相続人全員の話し合いです。

家庭裁判所の調停委員から公平な意見を根拠にしてアドバイスがされると、納得できるかもしれません。

調停委員から客観的なアドバイスを受けて、相続人全員の合意を目指します。

話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停を活用することができます。

4上場株式相続で多い失敗と失敗を防ぐ対策

失敗①遺産の全容を把握せずにトラブル

遺産分割協議をする前に、相続財産の全容を把握します。

相続財産に漏れがあると、相続人が不信感を覚えます。

相続人間に不信感が広がると、トラブルに発展します。

失敗1つ目は、遺産の全容を把握せずにトラブルです。

証券会社や金融機関への残高照会や名寄せを徹底します。

必要に応じて、証券保管振替機構への照会を活用します。

失敗を防ぐ対策は、財産調査の徹底です。

失敗②換価のタイミング誤り

上場株式は、日々価格変動があります。

売却のタイミングによっては、想像以上に低額な金額にしかならないことがあります。

相続人の思惑通りにならないと、トラブルに発展します。

失敗2つ目は、換価のタイミング誤りです。

換価を予定している場合、どのようなタイミングで売却するのか相続人全員で合意します。

合意内容は、遺産分割協議書に明記します。

日々価格変動があることを相続人全員が把握しておくことが重要です。

換金を複数回に分けることで、株価の急変リスクに備えることができます。

失敗を防ぐ対策は、株価の急変リスクに備えることです。

失敗③売却後に確定申告を忘れる

相続した上場株式を売却することがあります。

売却によって値上がり益を得た場合、譲渡所得が発生します。

譲渡所得を得た場合、確定申告が必要です。

失敗3つ目は、売却後に確定申告を忘れることです。

譲渡所得を得た場合、確定申告をします。

換価分割をした場合、売却金を得た相続人全員が確定申告が必要です。

換価分割をする場合、確定申告の有無を確認するといいでしょう。

失敗を防ぐ対策は、、確定申告の有無を確認することです。

失敗④配当金が受け取れない

上場株式を保有していると、配当金が受け取れることがあります。

被相続人が元気だった間に権利確定した配当金は、相続財産です。

上場株式と一緒に、相続人全員の合意で分け方を決めることができます。

相続が発生した後に権利確定した配当金は、相続財産ではありません。

相続人全員の固有の共有財産です。

上場株式とは別に、共有者である相続人全員の合意で分け方を決めることができます。

分け方を決める話し合いが長引くと、失敗します。

株式会社は、配当の請求に期限を設けているからです。

相続人が期限を知っていても知らなくても、期限が過ぎたら配当は受け取ることができません。

失敗4つ目は、配当金が受け取れないことです。

分け方を決める話し合いを早期に進め、相続手続をするといいでしょう。

失敗を防ぐ対策は、分け方を決める話し合いを早期に進めることです。

失敗⑤上場株式の評価誤り

相続財産全体の規模が一定以上である場合、相続税の対象になります。

上場株式の評価に不慣れな税理士に依頼した場合、適切な評価ができないことがあります。

失敗5つ目は、上場株式の評価誤りです。

経験豊富な税理士に依頼し、適切に評価申告をしてもらいます。

失敗を防ぐ対策は、経験豊富な税理士に依頼することです。

5株式の名義変更を司法書士に依頼するメリット

株取引に関心のない相続人は、現物の株式を受け取ることに不安を覚えます。

株式は日々値段が大きく変わりますから、トラブルになりがちです。

これらのトラブルは、相続人全員で相続財産の分け方を合意するときに、相続人全員で考えておけば防げます。

株式の名義変更でもめごとを起こしたくない方は、司法書士などの専門家に依頼するのをおすすめします。

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