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1 成年後見は被補助人・被保佐人・成年被後見人の3つ
成年後見は、法定後見と任意後見の2種類があります。
さらに、法定後見制度は3種類に分かれています。
法定後見は①補助②保佐③後見の3種類です。
法定後見でサポートしてもらう人は、それぞれ①被補助人②被保佐人③成年被後見人と言います。
①被補助人は判断能力が不十分な方
②被保佐人は判断能力が著しく不十分な方
③成年被後見人は判断能力が欠けているのが通常の方
通常、成年後見というときは、法定後見の③後見を指していることがほとんどです。
2成年後見(法定後見)のデメリット
法定後見は本人の財産を守る制度なので、ルールが比較的硬直的です。
①家庭裁判所に対して成年後見開始の申立てが必要
家庭裁判所での手続が必要な制度なので、手続の費用や手間がかかります。
申立て費用については、市町村の成年後見制度利用支援事業から助成金を受けられることがあります。
名古屋市のように、成年後見制度利用支援事業を行っている市町村もあれば、制度がない市町村もあります。
一度、役所に尋ねてみるといいでしょう。
助成金は申請すれば、必ず、助成が受けられるとは限りません。
助成が受けられることも、受けられないこともあります。
たとえ、助成を受けられるとしても、全額受けられるとは限りません。
一部だけ助成されることもあります。
②成年後見人を選べない
成年後見人を選任するのは家庭裁判所です。
成年後見開始の申立ての際に、成年後見人の候補者を立てることはできます。
家庭裁判所が候補者を選任することも候補者を選任しないこともあります。
他の家族が反対すれば、司法書士などの専門家を選ぶことが多いです。
本人の財産が多い場合も、家族以外の専門家を選ぶことが多いです。
実際のところ、家族が成年後見人に選ばれるのは、全体の2~3割です。
選ばれた人が家族でないからとか、意見の合わない人だからなどの理由で、家庭裁判所に不服を言うことはできません。
選ばれた人が家族でないからなどの理由で、成年後見開始の申立てを取り下げることはできません。
成年後見開始の申立てを取り下げる場合、家庭裁判所の審査中であっても、家庭裁判所の許可が必要です。
意見の合わない人だからなどの理由で、成年後見人を解任することはできません。
成年後見人を解任するには、横領をしたなど相当の理由が必要です。
③成年後見監督人が選ばれることがある
成年後見では、成年後見監督人は選ばれることも選ばれないこともあります。
家族が成年後見人に選ばれた場合、成年後見監督人が選ばれることが多いです。
任意後見の場合、成年後見監督人は必ず選ばれます。
成年後見では、成年後見監督人は選ばれることも選ばれないこともありますから、メリットともいえます。
④報酬の負担がある
まったく知らない専門家が後見人や成年後見監督人に選ばれた場合、本人の財産からその人に報酬を払う必要があります。
家族の人が後見人に選ばれたら、多くの場合無報酬なのに事務負担をかけてしまいます。
報酬については、市町村の成年後見制度利用支援事業から助成金を受けられることがあります。
名古屋市のように、成年後見制度利用支援事業を行っている市町村もあれば、制度がない市町村もあります。
一度、役所に尋ねてみるといいでしょう。
⑤積極的な資産運用はできない
成年後見制度は本人の財産を守るためのものなので、積極的な資産運用はできなくなります。
成年後見開始後は、本人の財産は本人のためにのみ、使うことができます。
原則として、贈与や貸付はできません。
例えば、本人が旅行やお食事に行く場合、同伴者の旅費や食事代名目の支出や贈与で問題になります。
同伴者が付添介護のための第三者であれば、通常は本人の財産から支出して差し支えありません。
成年後見人自身や成年後見人の家族は、付添介護のために同伴していても問題になるでしょう。
成年後見人や成年後見人の家族が利益を受けていますから、実質的に利益相反の恐れがあると言えるからです。
後から、家庭裁判所から指摘されることのないように支出前に充分協議するとよいでしょう。
本人が介護サービスを受ける名目で成年後見人や成年後見人の家族が報酬や費用を受け取る場合にも、同じことが問題になります。
本人に不利益になるおそれがあることから、積極的な資産運用もできません。
相続税を減らすため、生前贈与などもできなくなります。
本人が資産家の場合、相続発生した後の相続税を心配する家族の方もいます。
相続税を減らすための準備は相続人のためで、本人のために使ってるのではないからです。
成年後見制度は本人の財産を守るための制度で、財産を相続人のために使う制度ではないからです。
物事のメリットデメリットを充分判断できなくなったから成年後見をスタートしているので、本人が納得しているなどの理由は認められません。
⑥成年後見をやめることはできない
施設に入るための契約を代わりにやってもらいたいから、法定後見制度を使ったとしても、原則として、それ以降も後見制度を使い続ける必要があります。
成年後見は本人の保護が目的の制度なので、家族の意思でやめることはできません。
3家族が成年後見人になるメリット
①本人の性格や好みを知っている安心感
成年後見が始まったときには、本人は判断能力が低下して適切な判断ができなくなっています。
本人をサポートするためとはいえ、全く知らない人からあれこれ言われると安心できなくなることも多いでしょう。
家族であれば、しっかりしていた頃の本人の性格や好みを知っていることが多いことから、本人の希望を活かしてあげることができます。
②報酬の支払が不要
まったく知らない専門家が成年後見人に選ばれたら、必ず、報酬を支払うことになります。
家族が成年後見人に選ばれたら多くの場合、報酬の受取を辞退されるでしょう。
③財産状況を外部の人に知られない
まったく知らない人に本人の財産状況を知られるのは、家族にとって精神的負担が大きいです。
家族だけで完結すれば、精神的負担が少なく済みます。
4家族が成年後見人になるデメリット
①無報酬なのに事務負担
本人と同居して生計を同じくしていた場合、細かく収支を管理することはないでしょう。
成年後見人になると、家族であっても他人の財産を預かる人になりますから、家庭裁判所に財産目録の提出や業務報告をする必要があります。
家族が日常家事の延長として行う事務としては、大きな負担です。
事務負担を避けるために、専門家に依頼すると報酬を支払う必要があります。
専門家への報酬は、成年後見人が無報酬であれば成年後見人の持ち出しになります。
報告を忘れたり、報告内容に不備があると、やり直しになったり、調査を受けることになります。
②本人の財産を使い込むおそれ
本人の財産管理を任されていると自分のもののように心得違いをしてしまうことがあります。
家族の中でそのようなことが起きると、信頼していただけに裏切られた気持ちが強く、大きなトラブルに発展します。
本人と同居して生計を同じくしていた場合、お金の出どころを細かく管理することはないでしょう。
家庭裁判所に財産目録の提出や業務報告した際に、指摘されることになります。
横領と判断されると、解任されるおそれがあります。
③家族関係が良くないとかえってトラブルに
本人から財産を分与してもらえると期待している家族がいた場合、分与が受けられないとなるともめごとになるでしょう。
たとえ、成年後見人が適切に管理してたとしても、管理方針の違いからトラブルになることがあります。
家庭裁判所が選んだ人と財産などの管理方針が違うからとか、性格や意見があわないから、別の人を選び直して欲しいという不服があっても、受け付けてもらえせん。
5成年後見開始の申立を司法書士に依頼するメリット
認知症や精神障害や知的障害などで、判断能力が低下すると、物事の良しあしが適切に判断することができなくなります。
また、記憶があいまいになる人もいるでしょう。
このような場合に、ひとりで判断することが不安になったり心細くなったりしてしまう人をサポートする制度が成年後見の制度です。
判断能力が低下すると、本人自身も不安になりますし、家族も不安になります。
成年後見に限らず、制度にはメリットデメリットがあります。
本人にとって気にならないデメリットもあります。
家族がサポートすれば問題のないデメリットもあるでしょう。
他の制度を活用すれば、差支えがないものもあります。
本人や家族の意見共有が重要です。
身のまわりの不自由を補うために、身近な家族がお世話をすることが多くなるでしょう。
成年後見の申立をする場合、家庭裁判所へ手続が必要です。
身のまわりのお世話をしている家族が本人の判断能力の低下に気づくことが多いです。
身のまわりのお世話をしながら、たくさんの書類を用意して煩雑な手続をするのは負担が大きいでしょう。
司法書士は裁判所に提出する書類作成もサポートしております。
成年後見開始の申立が必要なのに忙しくて手続をすすめられない方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。