成年後見監督人は家庭裁判所が決める

1成年後見は本人をサポートする制度

認知症や精神障害があると、記憶があいまいになることがあります。

症状によっては、判断能力が低下して物事の良しあしを適切に判断することができなくなります。

ひとりで判断することが不安になった人や心細くなった人をサポートする制度が成年後見です。

成年後見には、2種類あります。

任意後見と成年後見(法定後見)です。

任意後見と成年後見(法定後見)は、どちらも本人のサポートのための制度です。

ひとりで判断することが不安になった人や心細くなった人に成年後見にをつけてサポートします。

物事の良しあしを適切に判断することができなくなると、自分が不利益になるのに気づかずに契約をしてしまうことがあります。

このような状態につけこんで来る悪質な業者の被害を受けてしまうおそれがあります。

ひとりで判断することが不安になった人や心細くなった人の利益を守るため、成年後見人は本人をサポートします。

成年後見人が適切に本人をサポートできるように、監督するのが成年後見監督人です。

成年後見監督人が適切に監督できるように、監督するのが家庭裁判所です。

本人を適切にサポートするため、成年後見人と成年後見監督人と家庭裁判所が協力します。

2成年後見人の家族は後見監督人になれない

成年後見人は、ひとりで判断することが不安になった人や心細くなった人をサポートする人です。

本人の財産を管理することで本人をサポートします。

成年後見人は本人の財産を管理するから、不適切な財産管理がされると本人が困ります。

成年後見人がサポートをしている場合、本人は物事のメリットデメリットを充分に判断するすることはできません。

不適切な財産管理がされても、不適切な財産管理だからやめてほしいと言えません。

後見監督人は、適切な財産管理ができるように監督します。

次の人は、成年後見人にも後見監督人にもなることはできません。

①未成年者

②後見人を解任されたことのある人

③破産者で復権していない人

④本人に訴訟をした人と訴訟をした人の配偶者、直系血族

⑤行方不明の人

次の人は、後見監督人になることはできません。

①成年後見人の配偶者

②成年後見人の直系血族

③成年後見人の兄弟姉妹

成年後見人の家族は、後見監督人にふさわしくないという意味です。

後見監督人は、成年後見人が適切に職務を行うようにサポートする人です。

不適切な財産管理を見つけたら、指摘して正さなければなりません。

後見監督人と成年後見人が家族の場合、不適切な財産管理を見逃すかもしれません。

成年後見人が家族である場合、家族が後見監督人に選ばれることは難しいでしょう。

3任意後見では後見監督人を不要にできない

①任意後見人は本人が自分で決める

任意後見は、認知症などになったときに備えてサポートを依頼する契約です。

任意後見は契約だから、だれと契約するのか本人が自分で決めることができます。

任意後見契約をした場合、物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなった後にサポートしてもらいます。

自分の財産管理などを依頼するから、信頼できる人と契約します。

多くの場合、本人の子どもなど近い関係の家族でしょう。

任意後見契約では、本人が選んだ人にサポートを依頼することができます。

②任意後見監督人は家庭裁判所が決める

任意後見は、サポートを依頼する契約です。

任意後見契約は契約だから、契約当事者が契約内容のメリットデメリットを充分に判断する必要があります。

認知症や精神障害などで判断能力を失った場合、契約などの法律行為はできません。

任意後見契約を締結した時点では、本人の判断能力は充分あるはずです。

本人は判断能力が充分にあるから、まだサポートは必要ありません。

サポートが必要になるのは、物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなったときです。

物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなったとき、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをします。

任意後見監督人選任の申立てにおいて、任意後見監督人の候補者を立てることができます。

家庭裁判所は、候補者を選任することもあるし第三者を選任することもあります。

家庭裁判所が任意後見監督人を選任したら、任意後見人はサポートを開始します。

4成年後見(法定後見)は後見監督人がつかないことがある

①成年後見(法定後見)人は家庭裁判所が決める

本人が元気なうちに将来に備えて任意後見契約をした場合、本人が選んだ人がサポートをします。

本人が元気なうちは、今日元気だからこれからもずっと元気でいられるだろうと思いがちです。

明日は元気でいられても、ずっと元気でいるのは難しいかもしれません。

将来に備えないまま判断能力を失った場合、家庭裁判所に成年後見開始の申立てをします。

成年後見開始の申立てには、本人の家族を成年後見(法定後見)人の候補者に立てることができます。

サポートする人は、家庭裁判所が決めます。

成年後見人の候補者である家族を選任することもあるし、見知らぬ専門家を選任することもあります。

成年後見人の候補者である家族を選任しなくても、家庭裁判所に文句を言うことはできません。

見知らぬ専門家を選任したから、成年後見開始の申立てを取り下げることはできません。

②後見監督人の必要不要は家庭裁判所が決める

任意後見では家庭裁判所が任意後見監督人を選任したら、任意後見人はサポートを開始します。

成年後見(法定後見)では開始の審判が確定したら、成年後見(法定後見)人はサポートを開始します。

成年後見(法定後見)では開始の審判で、後見監督人が選任されることがあります。

成年後見(法定後見)では、後見監督人が選任されることも選任されないこともあります。

家族が後見監督人をつけないで欲しいなど意見することはできません。

後見監督人をつけたから、成年後見開始の申立てを取り下げることはできません。

任意後見では、任意後見監督人を不要にすることはできません。

任意後見監督人を選任してから、任意後見人がサポートを開始するからです。

成年後見(法定後見)では、家庭裁判所が必要と認めたとき後見監督人が選任されます。

後見監督人をつけるか後見監督人をつけないか家庭裁判所が決めます。

本人の親族が成年後見人に選任された場合、後見監督人も選任されることが多いです。

次のような理由がある場合、後見監督人が選任されやすいです。

(1)本人の収入や保有資産が多いケース

(2)後見人が高齢や病気がちで職務に不安があるケース

(3)本人の財産状況が不明確なケース

(4)親族間の紛争があるケース

(5)不動産の売却など専門的知識を要する行為が予定されているケース

(6)遺産分割協議など利益相反行為が予定されているケース

(7)本人と後見人にお金の貸し借りがあるケース

③後見監督人は家庭裁判所が決める

後見監督人は、家庭裁判所が必要と認めたとき選任されます。

後見監督人として選任されるのは、多くの場合見知らぬ専門家です。

見知らぬ専門家だから変えて欲しいなどと家庭裁判所に言うことはできません。

④後見開始後に後見監督人を選任する

成年後見(法定後見)では後見開始の審判で、後見監督人が選任されることがあります。

後見監督人が選任されるのは、後見開始の審判をするときだけではありません。

後見開始がされた後で、後見監督人が選任されることがあります。

本人や親族は後見人の職務に不安がある場合、後見監督人選任の申立てをすることができます。

家庭裁判所が後見人の職務に不安を感じることがあります。

後見監督人選任の申立てがなくても、家庭裁判所は職権で後見監督人を選任することができます。

5後見監督人の職務

①後見監督人は成年後見人をサポートする

後見監督人は、成年後見人が適切に職務を行うように監督するのが職務です。

監督と言われると日常生活を監視されるイメージから不安に感じるかもしれません。

任意後見人は、多くの場合、本人の家族です。

成年後見(法定後見)人にも、本人の家族が選ばれることがあります。

本人の家族が法律の専門家であることはあまりないでしょう。

客観的には不正と判断されることを知識不足によってやってしまうことがあります。

後見事務の範囲を逸脱してしまう可能性があります。

法律の知識がないから不安になりながら後見事務をすることになります。

適切な事務を行うため、家庭裁判所に相談することは大切です。

家庭裁判所は、一般の人にとって身近な役所ではないでしょう。

後見監督人は、成年後見人の相談相手です。

成年後見人と後見監督人は、協力して本人をサポートする人だからです。

②利益相反行為は後見監督人が本人を代理する

本人と成年後見人で利益が相反することがあります。

利益相反とは、一方がソンすると他方がトクする関係のことです。

本人がソンすると成年後見人がトクする関係になる場合、成年後見人は本人を代理することができません。

典型的には、遺産分割協議です。

本人と成年後見人が相続人になる場合、利益相反になります。

本人を代理することができないから、遺産分割協議ができません。

成年後見監督人が、本人を代理して遺産分割協議をします。

成年後見人が選任されていない場合、特別代理人の選任の申立てをします。

家庭裁判所が選任した特別代理人が本人を代理して遺産分割協議をします。

③重要な行為の同意をする

成年後見人が重要な法律行為をする場合、後見監督人の同意を得る必要があります。

同意が必要になる主な行為は、次のとおりです。

(1)借金をすること

(2)不動産の取引

(3)訴訟行為

(4)不動産の新築、改築、大修繕

(5)相続放棄、遺産分割協議

④後見監督人の報酬は家庭裁判所が決める

多くの場合、後見監督人は家族以外の専門家が選任されます。

家族が成年後見人になった場合、報酬をご辞退することがあります。

家族以外の専門家は仕事として就任しているので、報酬を請求します。

後見監督人の報酬は、家庭裁判所が決定します。

家庭裁判所が決めた報酬額は、本人の財産から支払われます。

成年後見人が報酬を請求した場合、成年後見人の報酬と後見監督人の報酬を支払うことになります。

6成年後見を司法書士に依頼するメリット

任意後見制度は、あらかじめ契約で「必要になったら後見人になってください」とお願いしておく制度です。

認知症が進んでから任意後見契約をすることはできません。

重度の認知症になった後は、成年後見(法定後見)をするしかなくなります。

成年後見(法定後見)では、家庭裁判所が成年後見人を決めます。

家族が成年後見人になれることも家族以外の専門家が選ばれることもあります。

任意後見契約では、本人の選んだ人に後見人になってもらうことができます。

家族以外の人が成年後見人になることが不安である人にとって、任意後見制度は有力な選択肢になるでしょう。

一方で、任意後見制度では、必ず任意後見監督人がいます。

監督という言葉の響きから、不安に思ったり反発を感じる人もいます。

任意後見人が不正などをしないように監督する人と説明されることが多いからでしょう。

せっかく家族が後見人になるのに、あれこれ外部の人が口を出すのかという気持ちになるのかもしれません。

任意後見監督人は任意後見人のサポート役も担っています。

家庭裁判所に相談するより、ちょっと聞きたいといった場合には頼りになることが多いでしょう。

任意後見契約は締結して終わりではありません。

本人が自分らしく生きるために、みんなでサポートする制度です。

任意後見制度の活用を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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