同性婚は相続対策が不可欠

1同性パートナーは遺産相続ができない

①相続人になる配偶者は法律上の配偶者だけ

配偶者は、必ず相続人になります。

配偶者は、法律上の配偶者を指します。

法律上の婚姻をしていない配偶者は、相続人になれません。

日本においては現在のところ同性婚は認められていません。

同性パートナーは、法律上の配偶者ではありません。

相続人になる配偶者は、法律上の配偶者だけです。

②パートナーシップ制度を利用しても相続人になれない

パートナーシップ制度とは、法律上の婚姻と異なる形態のカップルについて各自治体が婚姻に相当する関係と認め証明書を発行する制度です。

たくさんの自治体でパートナーシップ制度が施行されていますが、すべての自治体で施行されているわけではありません。

パートナーシップ制度が施行されている自治体では、パートナーシップ宣誓をすることができます。

自治体から、パートナーシップ宣誓受領証を発行してもらうことができます。

パートナーシップ宣誓受領証を提示することで、婚姻に相当する関係と認めてもらいやすくなるでしょう。

パートナーシップ宣誓をしても、法律上の配偶者ではありません。

パートナーシップ制度を利用しても、相続人になれません。

③同性パートナーに遺留分がない

遺留分とは、相続財産に対する最低限の権利のことです。

兄弟姉妹以外の相続人に認められます。

同性パートナーは、相続人になれません。

同性パートナーには、遺留分が認められません。

④同性パートナーに寄与分がない

寄与分の制度は、特別な貢献をした相続人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらう制度です。

同性パートナーは、相続人になれません。

同性パートナーは、寄与分を請求することはできません。

⑤同性パートナーは特別寄与料を請求できない

特別な貢献をした人が相続人でなくても親族である場合、特別寄与者になることができます。

親族にあたるのは、次の人です。

(1)6親等内の血族

(2)配偶者

(3)3親等内の姻族

同性パートナーは、親族ではありません。

同性パートナーは、特別寄与者になることはできません。

⑥同性パートナーに配偶者居住権と配偶者短期居住権がない

配偶者居住権と配偶者短期居住権は、いずれも、被相続人の家に住んでいた配偶者が無償で住み続けることができる権利です。

配偶者居住権も配偶者短期居住権も取得することができる配偶者は、法律上の配偶者のみです。

同性パートナーは、配偶者居住権も配偶者短期居住権も取得することはできません。

死亡したパートナー名義の自宅で暮らしていた場合、住む家を失うおそれがあります。

2遺言書を作成して財産を引き継ぐ

①同性パートナーに遺贈する

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

譲ってあげる相手は、相続人以外の人でも構いません。

同性パートナーにも譲ってあげることができます。

相続では、遺言がなくても相続人が受け取ることができます。

遺贈は、遺言があるときだけ譲ってあげることができます。

同性パートナーは相続人になれませんから、相続はできません。

遺贈であれば、同性パートナーに財産を譲ってあげることができます。

遺贈とは、遺言によって、財産を譲ってあげることです。

遺贈をするためには、遺言書が不可欠です。

同性パートナーが特別な寄与をしている場合でも、同性パートナーは寄与分を請求することはできません。

被相続人は、遺贈をすることで寄与に報いてあげることができます。

②遺言書より遺留分が優先

遺留分とは、相続財産に対する最低限の権利のことです。

兄弟姉妹以外の相続人に認められます。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

被相続人の子どもや親などの直系尊属が相続人になる場合、遺留分があります。

相続人の遺留分を侵害するような遺言書を作成した場合、大きなトラブルになります。

遺留分権利者は、遺留分侵害額請求をすることができるからです。

遺言書を作成するだけで、遺留分を奪うことはできません。

遺留分は、相続人に認められた最低限の権利だからです。

遺言書の内容より遺留分は、優先します。

③遺言執行者選任で手続をおまかせできる

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動的に実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者がいない場合、相続人全員が協力して遺言書の内容を実現します。

相続人の中には、遺言書の内容を快く思わないことがあります。

遺言書の内容に賛成できない場合、遺言書の内容を実現することに協力をしないでしょう。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれます。

相続人全員の協力は、不要です。

遺言書の内容に反対の相続人がいても、協力してもらう必要はありません。

遺言執行者は、遺言書の中で選任することができます。

遺言執行者を選任しておくと相続手続をおまかせすることができるから、安心です。

④公正証書遺言がおすすめ

遺言書の種類は、法律で決められています。

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作るケースがほとんどです。

自筆証書遺言は、専門家の関与がなくひとりで作ることができるのでお手軽です。

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

厳格な書き方ルールに合わない遺言書は、無効になります。

法律の知識がない人が遺言書を作ることがあります。

厳格な書き方ルールに抵触して無効になってしまう可能性があります。

公正証書遺言は、公証人が文書に取りまとめて作る遺言書です。

公証人は、法律の専門家です。

法律の専門家が関与するから、書き方ルールで遺言書が無効になることは考えられません。

作成した遺言書は、公証役場で厳重に保管されます。

紛失や改ざんの心配がありません。

公正証書遺言を作るのは手間がかかりますが、メリットが圧倒的に大きい遺言書です。

遺言書を作る場合は、公正証書遺言がおすすめです。

3養子縁組で相続人になる

①養子縁組で養親の子どもになる

養子縁組とは、法律上の親子関係を作る制度です。

同性パートナーの気持ちは、婚姻に相当する関係でしょう。

親子関係を作るのは、違和感があるかもしれません。

養親になる人と養子になる人が合意すれば、養子縁組をすることができます。

養子縁組をすることで、養子は養親の子どもになります。

養子は、養親の氏を名乗ります。

養子は、養親の親族になります。

養親が死亡した場合、子どもは相続人になります。

②パートナーシップ宣誓をすることができなくなる

同性パートナー間で養子縁組をした場合、法律上は親子です。

多くの場合で、パートナーシップ宣誓をすることができなくなります。

パートナーシップ宣誓をする条件に、親子関係がないことがあるからです。

③相続税の基礎控除が少なくなる可能性

同性パートナーが死亡したときに、相続税がかかることがあります。

相続財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。

基礎控除は、次の計算式で求めることができます。

基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の人数

養子縁組をしなかった場合、兄弟姉妹が相続人であることがあります。

例えば、法定相続人になる兄弟姉妹が3人いた場合、基礎控除は4800万円です。

同性パートナー間で養子縁組をした場合、養子1人が法定相続人になるでしょう。

基礎控除は、3600万円になります。

養子縁組をすることで、たくさんの相続税を払うことになるおそれがあります。

4死因贈与契約で贈与

①遺留分は無視できない

死因贈与とは、贈与者が死亡したときに贈与する契約です。

死因贈与は契約だから、贈与する人と贈与を受ける人の合意で成立します。

贈与する人と贈与を受ける人の合意があっても、相続人の遺留分を奪うことはできません。

相続人の遺留分を侵害するような死因贈与契約を締結した場合、大きなトラブルになります。

遺留分権利者は、遺留分侵害額請求をすることができるからです。

死因贈与契約の内容より遺留分は、優先します。

②死因贈与執行者に手続はおまかせできる

死因贈与契約をする場合、執行者を選任することができます。

執行者は、死因贈与契約の内容を実現する人です。

執行者がいない場合、相続人全員が協力して死因贈与契約の内容を実現します。

執行者がいる場合、執行者が死因贈与契約の内容を実現してくれます。

相続人全員の協力は、不要です。

執行者を選任しておくと手続をおまかせすることができるから、安心です。

③贈与契約書は公正証書がおすすめ

死因贈与契約には、遺言書のような厳格な書き方ルールはありません。

贈与する人と贈与を受ける人の合意があれば、文書がなくても有効です。

死因贈与契約をしたと言っても、書面がないとだれも信用してくれないでしょう。

相続人とトラブルになることを避けるため、死因贈与契約は書面に取りまとめましょう。

死因贈与契約は公正証書にするのがおすすめです。

5特別縁故者は期待できない

①特別縁故者で財産を引き継ぐ

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があったと認められた人です。

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続人になる人がまったくいない場合、被相続人の財産は国庫に帰属します。

特別縁故者と家庭裁判所に認められた場合、被相続人の財産を引き継ぐことができます。

同性パートナーは法律上の配偶者でないだけで、事実上の配偶者でしょう。

同性パートナーが特別縁故者として認められることがあります。

特別縁故者として認められる可能性があるから、何も対策しなくていいという考えはおすすめできません。

②特別縁故者は相続人不存在のときだけ

法律上の相続人がいる場合、被相続人の財産は相続人が相続します。

特別縁故者が財産を受け継ぐ余地はありません。

③相続財産清算人選任の申立てに高額な予納金

特別縁故者として認めてもらう前提として、相続財産の清算が必要です。

被相続人の債権者がいる場合、債権者の支払いが先だからです。

相続財産の清算をする人は、家庭裁判所で選任してもらいます。

相続財産清算人選任の申立てには、予納金を納める必要があります。

財産規模にもよりますが、予納金は100万円程度になることが多いものです。

④特別縁故者はハードルが高い

特別縁故者は、家庭裁判所で認めてもらう必要があります。

特別縁故者であると主張するだけでは、認めてもらうことはできません。

家庭裁判所が納得する客観的証拠を準備する必要があります。

特別縁故者として認められるか認められないか家庭裁判所が判断します。

特別縁故者として認められても、わずかな財産だけ引き継ぐ決定がされる可能性があります。

5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

相続手続はタイヘンですが、相続人がいない場合もタイヘンです。

相続人がいないから、財産は国に持っていかれて、何もしなくていいと軽く考えがちです。

実際は、被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。

財産の内容によっては、100万円以上の費用の負担があることも見逃せません。

国に持っていかれるよりは、お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという気持ちがある人もいるでしょう。

お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという意思は遺言書で実現できます。

遺言書に、遺贈することを書き、遺言執行者を決めておけば、手間はかかりません。

お世話になった人は待っているだけで済みます。

遺言書は、書き方に細かいルールがあります。

細かいルールを守っていないと、遺言書は無効になってしまいます。

適切な遺言書作成と遺言執行者選任は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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